健康コラム

 

第10回 5/31は世界禁煙デー(2015年5月)

 

喫煙によりさまざまな病気の危険性が高くなることが知られています。たばこを吸っていると吸わない人に比べて肺がんによる死亡は約2?5倍に増えることがわかっています。その他にも口腔・咽頭がん、食道がんや狭心症・心筋梗塞、脳卒中の危険性が高くなることが知られています。また、肺気腫、喘息を悪化させること、歯周病を悪化させることも知られています。

たばこは喫煙者本人のみではなく、周囲の人の健康も害します。自分で喫煙していないのに、近くの人の喫煙から漏れた煙を吸ってしまうことを受動喫煙といいますが、受動喫煙でも肺がんや虚血性心疾患での死亡数が高くなることが報告されています。

喫煙はニコチン依存症であり、禁煙のためにニコチンガム、ニコチンパッチや内服の禁煙補助薬を使うことができます。これらのうちガムとパッチは薬局で市販されていますが、内服薬は禁煙外来を行っている医療機関で使用することができます。

禁煙は周囲から強制すべきではありませんが、ご本人が禁煙しようと思うきっかけや周囲の協力が重要です。禁煙してみようかと思い立ったら、禁煙外来で相談されてはいかがでしょうか。

(最寄りの禁煙外来を行っている医療機関は「sugu-kinen.jp 検索」でファイザー社のページより調べられます。)

 

笛木直人(おうら病院)

 


 

第9回 不眠について(2015年4月)

 

 「春眠暁を覚えず」という言葉のように春は眠くなる季節ですが、メンタルの不調が多くなる季節でもあります。メンタルの不調の最初のサインは不眠です。不眠にはタイプがあり、入眠障害(寝つきに1時間以上かかる)、中途覚醒(夜中、何度も目が覚めて、その後眠れない)、熟眠障害(眠ったはずなのに、ぐっすり眠った満足感がない)、早朝覚醒(朝早く目覚めてしまう)があります。不眠の原因は様々で、ストレスなど心理的な影響・うつ病のような精神疾患・睡眠時無呼吸症候群のような身体的疾患があります。もっと身近な原因として、いつもと違う時間に寝ようとすれば入眠障害が起きますし、眠れない時にアルコールを飲む方もいらっしゃると思いますが、逆に中途覚醒や熟眠障害の原因となります。また高齢になると睡眠時間が短くなる傾向があり5?6時間で目が覚めるようになります。8時に寝てしまうと夜中の1時か2時に起きて眠れなくなります。不眠症は「病気」のみが原因ではなく、生活習慣の乱れが原因の場合も多く、生活習慣の見直しが大切です(下記の「健康づくりのための睡眠指針2014」をご参照ください)。不眠が続き「病気」が疑われるようであれば専門医にご相談ください。

 

健康づくりのための睡眠指針2014 (平成26 年3月 厚生労働省健康局)

?睡眠12 箇条?

1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。

2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。

3.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。

4.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。

5.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。

6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。

7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。

8.勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。

9.熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。

11.眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。

12.いつもと違う睡眠には、要注意。

13.眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。

 

健康づくりのための睡眠指針2014 厚生労働省健康局(PDF)

 

柴田 信義(柴田メンタルクリニック)

 


 

 

第8回 スギ花粉症の新たな治療(舌下免疫療法)について(2015年3月)

 

 

 スギ花粉症とは、スギ花粉に対して体の免疫系が過剰に反応する病気です。これに対し、

アレルギーの原因となるスギ花粉からの抽出物質(抗原)を、ごく少量から徐々に口内(舌下)

に投与していき、体を慣れさせて免疫系の過剰反応を軽減させる治療法が、舌下免疫療法です。

アレルギーに対する体質改善を目指すもので、従来の治療(対処療法)とは異なる治療法であり、

2014年秋に保険適用になった新たな治療法です。

 実際の治療法ですが、アレルギー検査(採血)等を行い、スギ花粉症が確実なのを確認し、治療が

適切と判断されれば、クリニック内でスギ花粉エキスの初回投与を行います。

その後は、自宅用のスギ花粉エキス「シダトレン®」が処方され、自宅で1日1回「シダトレン®」を

決められた量、口内に投与・服用します。2週間かけて投与量を増やしていき(増量期)、その後問題

がなければ維持期用の「シダトレン®」が処方されますので、自宅で1日1回の服用を行い、定期的に

受診することになります。

 効果については個人差があり、この治療を行っても効果が認められない場合もあります。十分な効果

を得るには、最低3年以上の継続が必要と言われています。

この治療は定期的に持続させることが大切です。治療効果発現には時間がかかるので、この治療開始後

もしばらくは、花粉症時期に内服治療等と併用が必要になります。症状の改善が十分認められるように

なれば、内服の頻度も減らせるでしょう。また、ひどいカゼ症状や発熱・激しい咳など体調不良の際や

口内の傷・炎症・治療などの際は、副作用がでやすくなりますので一時的に治療の中断が必要です。

また注意すべき点として、この治療を開始するのはスギ花粉が飛散していない時期である必要がありま

す(副作用出現リスクのため)。ですので、今回のスギ花粉の時期は薬などで乗り切っていただき、

5月を過ぎたくらいから、来シーズン以降のために舌下免疫療法を検討されてはどうでしょうか。

 

 

瀬嶋 尊之(板倉耳鼻咽喉科クリニック)

 


 

 

第7回 子どものインフルエンザと解熱剤(2015年2月)

 

 「子どもがインフルエンザに罹った時、解熱剤を使ってはいけないの?」と漠然とした不安を持つ方は少なくないと思われますので、説明させて頂きます。

 数十年前、アメリカでReye症候群というインフルエンザ性脳症が問題になりました。脳症患者にアスピリン使用者が多かったので、中止したところ発生数が激減し、以降アスピリンとその類似薬はインフルエンザ患者に対して使用禁止になりました。

 「類似薬」というところがポイントで、これは総合感冒薬(PL顆粒®、LLシロップ®、ピーエイ錠®など)にも含まれていますので、ご注意ください。

 また、1990年代に日本でインフルエンザ性脳症が社会問題化した際、解析の結果、強い解熱剤(ポンタール®、ボルタレン®、など)使用者が重症化していることが判明し、以降子どもに安全に使用できる解熱剤はアセトアミノフェン(アンヒバ坐薬®、カロナール®、コカール®など)のみとされています。

 しかし、2014年にアセトアミノフェンの過剰使用に対する注意喚起がなされました。これは前述の総合感冒薬にもアセトアミノフェンが含まれており、それを服用しながら頓服薬としてアセトアミノフェンを併用すると合計量が多くなるので危ないという意味です。

 以上より、インフルエンザ流行期には総合感冒薬の使用を控え、解熱剤はアセトアミノフェンに限定すべき、ということになります。

 

武井 克己(たけい小児科・アレルギー科)

 

                                                                    


 

 

第6回 乾燥性湿疹(2015年1月)

 

 皮膚科には毎年、空気が乾燥する10月頃から翌年の4月頃までの間、乾燥性湿疹の患者さんが数多く来院します。そのほとんどは高齢者や幼小児ですが、最近では清潔志向が強く体を洗い過ぎてしまう若者も少なくありません。症状は、すねや腰のカサカサから始まり、白い粉をふいてかゆみを伴ったり、ひび割れを生じてお湯がヒリヒリしみるようになったりするのが特徴です。ひどくなると、全身どこにでも同様の症状が現れます。

 皮膚の水分量(うるおい)は、皮脂、角質細胞間脂質(セラミドなど)、天然保湿因子によって一定に保たれています。乾燥肌や乾燥性湿疹はこれらの物質の減少によって起こり、外的刺激{洗浄剤(洗剤、ボディーソープ)や住環境(室内の乾燥)}や内的要因{加齢や生活習慣、アトピー体質}が大きく影響していると考えられています。そのため、乾燥肌を予防するには、熱いお風呂や長時間の入浴を避ける、ボディーソープの多用を避け、ナイロンタオルで肌を強くこすらない、室内の温度を上げ過ぎず、加湿器などをうまく利用する、アルコールや香辛料などの刺激物をとり過ぎない、といった注意が必要となってきます。また、入浴直後に保湿クリームを塗るのも効果的です。

 今が一年間で最も乾燥する季節です。この時季、肌にうるおいを保つようなスキンケアを心掛けてみてください。

 

峰咲 幸哲(館林医院)

 


 

 

第5回 ノロウイルス感染症について(2014年12月)

 

 寒さがきびしい季節になってきました。例年11月頃になるとノロウイルスによる胃腸炎の発生が見られます。ノロウイルスは主にウイルスに汚染された水や魚介類(特に貝類)を摂取することで感染します。またノロウイルスは感染力がとてもつよく、ウイルスに感染した人の吐物や便からも容易に感染します。集団感染を起こす胃腸炎のほとんどがノロウイルスによるものと言われています。

 主症状は嘔吐、下痢です。ご高齢の方や体力のおちた方は脱水になり重症化することがあり注意が必要です。診断は便中のノロウイルスを検出することによってなされます。平成24年より15分で判定できる迅速キットが保険適用となり比較的容易に可能となりました(※3歳未満、65歳以上、抗がん剤治療中の方などに保険適用)。ただ迅速キットは必須なものではありません。速やかに他者への感染対策がとれるということに意義があります。治療はノロウイルスの特効薬はなく、他の胃腸炎と同様に脱水の治療などが中心となります。

 予防には外出後や食事前など頻回の手洗いが効果的です。もし身近な方が感染したら吐物や便の扱いには十分注意してください。ノロウイルス感染者の吐物や便にはウイルスが含まれています。使い捨ての手袋、ガウン、マスク、くつカバーなどを使用し、次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)による消毒が必要です。アルコール消毒はノロウイルスに対しては効果が弱く適しません。胃腸炎はたいへんつらいものです、予防をこころがけて冬をのりきりましょう。

 

海宝 雄人(海宝病院)

 


 

第4回 世界糖尿病デー(2014年11月)

 

 食べ物がよりおいしい秋になりました。

 さて、皆様ご存じですか。11月14日は「世界糖尿病デー」に指定されています。拡大を続ける糖尿病の脅威に警鐘を鳴らすため、国連が平成19年から毎年11月14日を「世界糖尿病デー」に決めました。シンボルマークの「ブルーサークル」は、国連や空を表す「青(ブルー)」と団結を表す「輪(サークル)」 を意味しています。建造物や公園が青色にライトアップされるなど、糖尿病の正しい理解を促し予防の意識を高める目的で毎年さまざまなイベントが世界各地で催されています。平成26年群馬県では草津温泉湯畑、高崎市白衣大観音等がブルーライトアップされる予定です。なお、11月14日は糖尿病治療に重要な役割を果たすインスリンを発見し、ノーベル生理学・医学賞を受賞したフレデリック・バンティング博士の誕生日にあたります。

 この活動を通して糖尿病に対する社会的な関心が高まり、早期発見治療そして合併症の予防につながっていくことを願っております。

 

笠原 隆行(かさはら内科医院)

 


 

第3回 ピンクリボン運動(2014年10月)

 

 みなさんはピンクリボン運動という言葉を聞いたことがありますか?

 乳がんで亡くなられた患者さんの家族が「このような悲劇が繰り返されないように」との願いを込めて作ったリボンからスタートした、乳がんの早期発見のための啓蒙運動です。1980年代のアメリカで始まったとされています。

 乳がんは女性がかかるがんの中で一番多く(死亡原因としては肺がんや大腸がんなどの方が多い)、日本人女性が一生の間に乳がんになる割合は数年前には約20人に1人といわれていましたが、最近の調査では約16人に1人とされており、年々乳がんの発生率は上昇していますし、乳がんで亡くなる方も増えております。

 日本人女性の乳がんの発生率が上昇した原因としては、食生活を含めたライフスタイルの変化が指摘されております。中でも肥満(閉経後)は最も関連があるようですし、飲酒や喫煙なども悪影響を及ぼします。

 発症しやすい年齢は40歳台後半から50歳台前半ですので、閉経前後の時期が要注意ですが、80歳をすぎて乳がんが見つかることもあります。

 欧米では乳がんになる女性の割合は日本と比べて圧倒的に多いのですが、乳がんで亡くなる方は減少する傾向にあります。その理由として、欧米では乳がん検診を受診する女性の割合が高いことが挙げられております。他のがんと同様に乳がんでも早期発見により完全に治癒することが期待できるのです。

 毎年10月は「乳がん月間(ピンクリボン月間)」です。乳がんに限らず、これまで検診を受けたことがない方も検診を積極的に受けてみてはいかがでしょうか?

 

堀井 吉雄(堀井乳腺外科クリニック)

 


 

第2回 抗菌剤(抗生物質)(2014年9月)

 

涼しくなってきましたが、咽頭痛・咳など感冒症状で医療機関を受診した時に良く処方されるのが抗菌剤です。しかし「なつかぜ(健康コラム第1回)」には抗菌剤は無効です。抗菌剤は抗生物質ペニシリンがアオカビから発見されたのが最初ですが、ウイルスに対する作用はなく、真菌(かび)にも効きません。現在ではセフェム系やマクロライド系など多くの種類の抗菌剤があり、病気の原因菌により使い分けています。

世界でも多くの国で医師の処方箋がないと抗菌剤は購入出来ません。その理由は乱用によって抗菌剤が効かない菌(耐性菌)の発生を防ぐためです。有名なのはメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)で、弱毒菌ですが寝たきりなど免疫力の低下した人が感染すると重症化し、院内感染の原因にもなります。また抗菌剤の長期投与ではカンジダなどの真菌感染症を起こすこともあるので注意が必要です。

日本では他国に比べ抗菌剤の使用が多い傾向にあり、私も患者さんから求められると処方してしまう事もあります。ウイルス感染症で抗菌剤アレルギーを発症することもあり、医師は疾患をきちんと診断し抗菌剤も含め症状にあった処方をすべきと自省しています。患者さんも抗菌剤は万能薬ではないと理解して頂く必要があります。

 

田中 亨 (たなか医院)

 


 

第1回 なつかぜ(2014年8月)

 

 猛暑到来です。夏中心に流行る似たようなかぜ症状をまとめて「なつかぜ」と呼んでいます。アデノ、エンテロ、コクサッキー、エコーなど原因ウイルスは全部で100種類以上あり、何回もかかります。

 症状は、高熱と頭痛、胃腸症状が中心です。高熱の割にけっこう元気なお子さんが多いです。年長になるほど頭痛や倦怠感が目立ちます。胃腸症状は、食欲低下や嘔吐、腹痛、下痢などです。そのほか、目の充血や目やに、のどの痛みや口内炎、体や手足に発疹がみられることも多いです。同じウイルスでも、人によって症状の組合せと程度は様々。口内炎がいっぱいできる「ヘルパンギーナ」や、手足を中心に水疱ができる「手足口病」、高熱と目の充血とのどの痛みがくる「咽頭結膜熱」もなつかぜの一つですね。

 飛沫と糞口感染が主な感染ルートです。子どもだけでなく、おとなもうつります。トイレの後を中心としたこまめな手洗い、タオルを共有しないことなどで予防しましょう。

 これからの季節、熱中症とあわせて、なつかぜにもご用心を。

小柳富彦(こやなぎ小児科)

 
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