健康コラム

 

第20回「花粉症(アレルギー性鼻炎)に対するレーザー治療について」(2016年3月)

 

 

アレルギー疾患の中でも唯一と言っていいほど手術治療法が行えるのが、花粉症・アレルギー性鼻炎に対するレーザー治療です。鼻内の粘膜をレーザー光線で焼くことによって、腫れた粘膜そのものを焼き縮めて鼻の通りを良くして、鼻づまりに効果があります。

加えて、焼かれた組織は表面が線維状にコーティングされたような状態となり、アレルギー原因物質(抗原)が入ってきてもその場所でアレルギー反応を起こしにくくなり、くしゃみや鼻水に対しても一定の効果が認められます。

 

なお、レーザーの種類は様々なものがありますが、クリニック等で医療用レーザーとして広く普及しているものは炭酸ガスレーザーです。本来このような機器はレーザー管理区分クラス4の機器であり、レーザー管理区域を設けレーザー機器管理者による管理がなされなければなりません。治療を受ける際は、充分な安全対策をしている施設で受けていただきたいと思います。

 

実際の治療方法ですが、まず麻酔薬に浸したガーゼを鼻内に入れ、15分ほどおいて粘膜表面を局所麻酔します。これで手術中の痛みはほとんど出ないレベルになります。麻酔後に鼻内を肉眼でみながら、レーザー光線で粘膜を焼いて行きます。レーザーを当てている時間は両側で10分ほどです。治療後は特に出血がなければそのままお帰りいただきます。術後1~2週間は粘膜の刺激症状と鼻内にかさぶた等が付着して、かえって鼻水や鼻づまりが一時強くなると思います。

しかしその時期を過ぎると鼻症状はかなり改善し、十分に効果を実感できるようになると思います。かさぶたの掃除のため、術後は1~2週間毎に2~3回の通院を要します。

 

最後に注意すべき点としては、レーザー治療の効果は一生続く訳ではなく、アレルギー自体が治る訳でもないということです。レーザーの効果には個人差がありますが、平均で1~2年と考えておくのが良いと思います。ただこれでも、本当につらい時期を乗り越えられたのでもう一度希望したいという人や、受験生なので今回だけでも症状を十分に抑えたいと言って希望する人もいらっしゃいます。

なお、花粉症の場合は花粉シーズン中のレーザー治療は避けるべきで、予防的に前年の秋~12月頃までにレーザー治療を済ませておくのが良いと思われます。ですので、今回のスギ花粉の時期は薬などで乗り切っていただき、来シーズン以降のためにレーザー治療を検討されてはどうでしょうか。

 

 

瀬嶋 尊之(板倉耳鼻咽喉科クリニック)

 

 


 

 

第19回 「子どもに漢方?」(2016年2月)

 

私は小児科医ですが、診療に漢方薬を取り入れています。

「漢方薬ってお年寄りの薬というイメージがあるけど、子どもに効くの?飲めるの?」と感じる方も多いと思われますが、結構役に立っています。

といっても、はじめからいきなり漢方薬を処方することはありません。西洋医学で対応できない時にお勧めするというのが私のスタンスです。

 

例えば、鼻水。

風邪を引いて処方された西洋薬を飲んでいるけど、鼻水/鼻づまりが続いて夜つらそう・・・こんな乳幼児には、小青竜湯、葛根湯加川辛夷、辛夷清肺湯、小柴胡湯加桔梗石膏などを単独で、あるいは組み合わせて使うと楽になることを多く経験し、効果を実感された方はリピーターになります。

 

他に、夜泣き、風邪を引きやすい、食が細い、よくお腹を痛がる、など、西洋医学ではあまり病的に捉えず治療法もない症状にも漢方では薬が用意されています。

 

テレビアニメの「ちびまる子ちゃん」に出てくる山根君をご存じですか?

そう、緊張する場面になると、すぐにお腹が痛くなり顔色が悪くなる彼です。

山根君には小建中湯という漢方薬がピッタリ。緊張を和らげ、お腹の痛みを取り、食欲が出て風邪を引きにくくなるという子ども用の漢方薬なのです。彼が登場するたびに「ああ、小建中湯を飲ませたい?」ともどかしくなる私です。

 

漢方薬は苦いので子どもには無理、と思われている方へ。

甘い薬に慣れた子どもに飲ませることは確かにハードルが高いのですが、工夫次第で何とかなることも多いのです。飲ませ方のノウハウを当院HP(※)に公開していますので、興味のある方はご参照ください。

 

※漢方エキス剤を子どもに飲ませる工夫

 (http://www.takei-c.com/diary/cn43/kanpo_drug.html)

 

 

武井 克己(たけい小児科・アレルギー科)

 

 


 

第18回 口唇ヘルペス(2016年1月)

 

口唇ヘルペスは、口唇やその周囲に軽い痒みや違和感を生じた後に小水疱(小さい水ぶくれ)が現れるのが特徴で、痂皮化(かさぶた)して治癒するまでに約5?7日かかります。原因は、単純ヘルペスウイルスによる接触感染および再活性化(再発)です。乳幼児期に初感染した場合、口内炎や微熱が現れることもありますが、たいていは症状が出ないまま、顔面の感覚を伝える三叉神経節の神経細胞に潜伏します(不顕性感染)。その後しばらくして、風邪や紫外線、ストレス、疲労などが誘因となって、再発を繰り返すようになります。

 

口唇ヘルペス発症時の水疱内には大量のウイルスが存在していることから、周囲への感染を防ぐには、

 

  1) 乳幼児などへのほおずりやキスなどの接触をさける

  2) 手指を介した感染を予防するためにせっけんでまめに手を洗う

  3) 食器やタオルなどを介した感染を予防するために生活用品の共用を避ける

    (食器は洗剤でよく洗い、タオルなどはほかの洗濯物と一緒に洗ってもよいが、

     日光に当ててよく乾かす)

 

といった点に注意が必要です。特に免疫機能が未発達な新生児や病気などで抵抗力が落ちている人への感染は重症化しやすいため、なるべく接触は控えた方がよいでしょう。

 

治療は、発症早期あるいは軽い痒みや違和感を生じた時期からの抗ウイルス薬の内服が最も効果的です。ただし、抗ウイルス薬はウイルスの増殖を抑制するだけで、潜伏ウイルスを排除する効果はないため、再発を予防することはできません。したがって、口唇ヘルペスを持つ患者さんは、日頃から再発につながるような種々の刺激をなるべく受けないような生活面での工夫が必要となります。

 

 

峯咲 幸哲(館林医院)

 

 


 

 

第17回 大腸がん検診について(2015年12月)

 

大腸がんは国立がんセンターの「2015年がん統計予測」によると罹患数(新たにがんと診断されるがんの数)では各種のがんの中で一位で、最近非常に増えているがんです。

 

行政が行っている大腸がん検診は「便潜血反応検査」といい2回分の便を採取して便に含まれる微量の血液成分を検出する簡単な検査です。とても鋭敏な検査で1滴の血液を垂らしたお風呂からも陽性反応が出ると言われます。死亡率の減少効果は60%と報告されており、統計学的にも検診の効果が証明されています。以前は受診率が低かったのですが、最近の啓蒙活動により日本全体では30?40%に改善してきています。しかし、館林・邑楽地区ではまだまだ受診率が低い状態が続いており今後の啓蒙が必要と感じています。

 

1次検査では約7%の方が便潜血反応陽性となり、主に大腸内視鏡検査などの2次検査が推奨されます。2次検査を受けた方の1?3%に大腸がんが見つかり、残りの半分が大腸ポリープ、その他は痔核、憩室、正常などです。現状では2次検査が必要とされた方の6割程度しか医療機関を受診せず問題となっています。「もしがんだったら怖いから受診しない」と考える方もいるかもしれません。しかし大腸がんは他のがんと比較すると比較的予後が良いがんで早期に発見されれば治癒することが多いがんです。

40歳以上の方はぜひ大腸がん検診を受け、便潜血が陽性になればぜひ1度は大腸内視鏡検査を受けましょう。

 

海宝 雄人(海宝病院)

 

 


 

 

第16回 糖尿病と歴史(2015年11月)

 

「この世をば我が世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」

という和歌を詠んだことで有名な藤原道長(966?1027)が、日本で最初の糖尿病患者として知られています。この歌は栄華の絶頂期に娘三人を相次いで宮中に送り込み、祝宴で喜びのあまり詠まれた即興の作だったそうです。

 

当時並ぶ者なき権勢と栄華を誇った道長は、美酒美食に明け暮れ、運動不足となり、さらには権力闘争でストレスもあったことが想定されます。摂政の地位についた頃から「昼夜なく水を飲みたくなる、口が渇いて脱力感がある。しかし食欲は減らない」と、同時代の公卿であった藤原実資の残した日記「小右記」に記されています。同じく「小右記」に道長の目が見えなくなったことが書かれており、顔を近づけても相手が誰かわからなくなっていたそうです。白内障か糖尿病網膜症であった可能性が高いと考えられます。

 

平安時代においては、一般庶民の食事は極めて質素でしたが、王朝貴族はかなり贅沢な食事をとっていたようです。当時糖尿病は飲水病とも呼ばれ、平安時代の貴族には飲水病が多かったと伝えられています。遺伝的素因、過飲過食、運動不足、ストレスと今日的な意味での糖尿病発症因子が道長にはすべて備わっていました。

 

最高権力者藤原道長の終焉とともに望月は欠けはじめ、日本は摂関政治から武家政治へと移行していくことになったのです。因みに武家政治を確立した源頼朝も、「飲水の重病」、すなわち糖尿病を患っていたことが、近衛実家による日記「猪隈関白記」に記載されています。

 

笠原 隆行(かさはら内科医院)

 

 

 


 

 

第15回 中間期乳がんと乳がんの手術法について(2015年10月)

 

ご存知の方も多いと思いますが、ある女性タレントが乳がんとわかり、手術を受けること、そしてその病状について公表し、大変な話題になっております。

特に注目されたのは、毎年検査を受けていたにもかかわらず、乳がんが見つかった時には2になり、腋の下のリンパ腺にも転移している可能性があるとの内容です。そして、乳房切除術(乳房全摘出)が必要となったことです。

このように検診で異常がなかったにもかかわらず、次の検診までの間に見つかる乳がんを「中間期乳がん」と言います。このタレントさんについての正確な詳しいことは判りませんが、一般的なことを書いてみたいと思います。

 

中間期乳がんには、前回の検診時にもあったが、いわゆる「見落とし」ではなく、どうしても検査で見つかりにくかったものと、乳がんが急速に大きくなったものとがあります。乳がん検診の手段としては、視触診とマンモグラフィという乳房をはさんで撮影するレントゲン検査、超音波検査が一般的です。マンモグラフィは乳房にできたしこり(腫瘤、かたまり)を見つける他、しこりとしては認識できないが乳腺にできるわずかな引きつれ、ゆがみ、そして石灰化(カルシウムの微少なかたまり)などの所見から乳がんを見つける検査です。検診として乳がんの死亡者数を減らす効果が認められています。

 

しかし、撮影の際に乳房の中で被いきれない(はさみきれない)部分が生じることがあります。つまり、マンモグラフィで写らない部分があり得るのです。また、マンモグラフィでしこりは白い影として写りますが、乳腺そのものも白く写るため、乳腺組織が豊富な人ではしこりがわかりにくくなります。

 

その点、超音波検査は乳腺組織が豊富な人でも、特にしこりを見つけるのに有効で、とても小さい乳がんでもみつけられることがあります。しかし、超音波検査でも乳首のすぐ下や、乳腺の端など、見えにくい部分があります。またしこりは超音波検査では黒く写るため、乳腺組織が少なく、乳房全体が黒っぽく見える人は逆にしこりが見つかりにくい場合もあります。

 

そして、大きくなるスピードが速く、早期に発見することが難しい乳がんもあります。前回の検査の際にはまだ小さくてわからなかったようなものが、1年または2年後にははっきりとわかる大きさに増殖しているような乳がんがあるのです。

 

検診を受けることは重要です。それでも、見つかりにくい乳がんや増殖の速い乳がんはあります。マンモグラフィにしても、超音波検査にしても、検査で異常がなければ100%大丈夫とまではいえないのです。検診で大丈夫と言われても、普段から自己検診も行い、自分の乳房に何か以前とは違う感触がないか、セルフチェックすることも重要なのです。

 

もうひとつ、乳がんの手術に関して。たとえ乳がんが大きくても、乳首から離れた場所にできた場合は、手術前に抗がん剤などの治療でしこりが小さくなれば、乳腺の一部を切除する乳房温存手術が可能になる場合があります。

一方、乳がんが小さくても、乳首にごく近い場所にできると乳房温存手術は難しくなります。また、がん細胞が乳管内にとどまっているような乳がん(非浸潤がん)が乳房の広い範囲に広がった状態で見つかることがあります。非浸潤がんは病期でいうと0期でごく初期ということになりますが、広がり方によって乳房切除が必要になります。つまり、初期の状態で見つかっても、乳房切除術が必要となることもあるのです。

 

このように、乳房温存手術でよいか(特に乳首を残せるか)、乳房切除術になるかは、乳がんの広がりとできた場所によって大きく影響されるのです。

 

 

堀井 吉雄(堀井乳腺外科クリニック)

 

 

 


 

 

第14回 加齢黄斑変性症(2015年9月)

 

加齢黄斑変性とは、モノを見るときに重要なはたらきをする黄斑という組織が、加齢とともにダメージを受けて変化し、視力の低下を引き起こす病気のことです。

私たちはモノを見るときに、目の中に入ってきた光を網膜という組織で刺激として受け取り、その信号を脳に送るために視神経に伝達します。その網膜の中心部分が黄斑です。黄斑が変化すると、モノがゆがんで見える、視野の中心が暗くなる・欠ける、視力が低下するなどの症状が出ます。

加齢黄斑変性は、糖尿病網膜症、緑内障とともに、失明を引き起こす病気として注意が必要です。

 

どのようにして黄斑がダメージを受けるのでしょうか。加齢黄斑変性には「萎縮型」、「滲出型(しんしゅつがた)」の2種類があり、それぞれ原因が違います。

 

「萎縮型」は、黄斑の組織が加齢とともに萎縮する現象です。症状はゆっくりと進行し、急激に視力が低下することはありません。

「滲出型」では、網膜のすぐ下に新しい血管(新生血管)ができて、この血管が黄斑にダメージを与えます。新生血管は正常の網膜にはない血管で非常にもろく、成分が漏れ出て溜まる、あるいは出血を起こしやすいという特徴があります。この血管から出た液体が黄斑の組織にダメージを与えて、視覚障害を引き起こすのです。

「萎縮型」の治療は必要ありません。ただし、「滲出型」に移行して急激に視力が低下することがあるので、定期的な検診が必要です。

「滲出型」の治療は抗VEGF療法という新生血管を沈静化させる薬を硝子体内に注射する方法が一般的です。その他にも、光に反応する薬剤を体内に注射し、それが新生血管に到達したときに弱いレーザーを照射して新生血管を破壊する「光線力学的療法」、新生血管をレーザーで焼く「光凝固法」などの新生血管を破壊することで黄斑へのダメージを食い止める外科的治療もあります。新生血管の大きさや場所によっては、早期に発見できれば治療後の見えない部分を最小限に抑えることができ、視界にほとんど影響がなくてすみます。

日頃から、片目ずつモノがゆがんで見えないかチェックして、早期の発見に努めましょう。

 

岸本 尚人(きしもと眼科)

 

 


 

 

第13回 子どもの予防接種(2015年8月)

 

体にとって、病気になってからの「治療」より、病気にならない「予防」のほうが良いことです。特に治療がない、重い合併症がある、命にかかわる病気であればなおさらです。そういった感染症に対して予防接種(ワクチン)があります。

最近、お子さんの受ける予防接種が増えました。以前の定期接種は、三種混合(ジフテリア、破傷風、百日咳)、BCG(結核の予防)、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎でした。最近はこれに、ヒブ、肺炎球菌といった重症細菌感染症の予防ワクチン、水痘(みずぼうそう)が定期接種に追加されました。このおかげで、細菌性髄膜炎や水痘の患者さんが一気に減りました。また、混合ワクチンも開発されていますし、効果をよくするために接種回数が増えるなど工夫もされています。定期接種以外でもロタウイルス、B型肝炎、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、インフルエンザ等の予防接種があり、予防医療に貢献しています。

予防接種により、かからない・かかりにくい、かかっても軽く済む、他の人にうつさないといった効果が期待できます。

治療より予防。予防医療の大切さを学び、予防接種を受けられる年齢、月齢になったら早めの接種をお考えください。

 

小柳 富彦(こやなぎ小児科)

 


 

第12回 熱中症(2015年7月)

 

いつの頃からか夏になると熱中症という言葉をマスコミから聞くようになりました。熱中症は「暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称」と定義されています。簡単に言うと「暑さが原因の体調不良」で、昔よく聞いた日射病は太陽の直射による発症とされています。

 

熱中症を引き起こしやすい条件は以下の組合せです。

 

・環境: 高温、多湿、風が弱い、熱の発生源、閉め切った室内、冷房がない

・体調: 高齢者、乳幼児、持病(糖尿病、心臓病、精神疾患など)、下痢などの脱水症状

・行動: 激しい運動、屋外や暑いところでの長時間の作業、水分補給の不足

例えば、高温多湿な職場で水分を摂らずに長時間労働した場合、夏に高齢者が冷房を使用せず部屋にいる場合、幼児が暑い車内に放置されている場合などです。

 

熱中症には重症度分類があり症状は以下の通りです。

 

・軽症    l 度: めまい・立ちくらみ、有痛性の筋肉の痙攣

・中等症 ll 度: 頭痛、嘔吐、倦怠感、集中力や判断力の低下、ショック症状

・重症  lll度: 中枢神経症状(意識障害、けいれん発作)、肝・腎機能障害、血液凝固異常

 

治療ですが、l度(熱失神、熱けいれん)は末梢血管拡張と塩分喪失による脱水のため、涼しい所での水分補給(経口補水液、スポーツ飲料、0.1?0.2%食塩水)と安静が推奨されます。

ll度(熱疲労)は大量発汗による脱水と体温上昇のため、l度と同じ処置と医療機関で輸液による脱水補正が必要になります。lll度(熱射病)では体温調節機能の破綻から発汗停止し異常高体温になり、救急搬送して集中的治療が必要となります。

l?ll度の症状がある場合は受診をお勧めします。熱中症になったと言って来院する患者さんも多いですが、医師は上記の事を考えて診察し他の疾患を鑑別して治療を行っています。

 

熱中症には予防も大事です。高齢者は温度が分かりにくく・熱放散が上手でなく・体液量の低下があり、子供は体温調節が未発達・上手く症状が伝えられないため熱中症になり易いです。暑い日には熱中症にならないように、こまめな水分補給と涼しい所で過ごすなど暑さ対策が必要です。もっと詳しくお知りになりたい方は、環境省の「熱中症 環境保健マニュアル」が一般向けに細かく記載されており、インターネットで閲覧・ダウンロードできます。

 

                                                                                                                                                                                   田中 亨(たなか医院)

 

 


 

第11回 6月はリウマチ月間です(2015年6月)

 

 現在のアンカードラッグと言われているメソトレキサートが関節リウマチ治療に認められてから16年、特効薬である生物学的製剤が使われ始めてから12年が経ちました。効果的な薬剤が使われ確かにリウマチ外来の待合室の光景は以前と変わったと言えるでしょう。この間に診断基準も改訂され治療方針や目標も変わってきました。不治の病の代表でもあった関節リウマチは今では治る時代とも言われています。

 しかし、今まで経験したことのない副作用で困ることも多くなりました。感染症や肺障害などです。関節リウマチの病態の基本は免疫異常と言われていますが、関節の変形が起こる前から免疫異常による気道病変が起こっていたり、またそこに薬剤性の肺障害が追加されることもありまれに重篤な合併症を患う方がいます。これらに対しては医師からの注意喚起とともに患者さん本人の十分な理解が必要です。最近では関節リウマチの状態をさらによくするためには最後はやはり患者さん本人の病気への理解、薬への理解が欠かせないという報告もあり、変化していく関節リウマチ治療へのよりいっそうの理解を求めていく動きもあります。

 6月はリウマチ月間です。市民公開講座などもあり、変わりゆく関節リウマチ治療について今一度考えてみるいい機会かと思います。

 

綾部 敬生(慶友整形外科病院)

 
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