健康コラム

 

 

第49回 「夏を楽しく過ごすための暑い日の注意点」 (2018年8月)

 

熱中症について                             

今年の夏は異常といえるような猛暑の連続で気象観測史上今回初めて、といった表現を連日耳にしていることと思います。熱中症で救急搬送され重篤な状態に陥っている方も多数出ています。

そこで今回熱中症について少し考えてみましょう。

 

まず初めに、人間にとっての水の役割を知りましょう。

【体内での水の役割】

 A 様々な物質の溶媒としての役割

   生体内反応の場所

   消化・吸収作用を助ける

   物質の輸送を行う

   物質の分泌と排泄の溶媒

   体内電解室の平行維持

 

 B 体温の調整

   体温の保持

   体熱の放散

 

次に脱水の状態で起こる変化を挙げてみましょう。

【脱水とは】

水分摂取量不足による水分不足と嘔吐や下痢、尿量増加による塩分を主とした電解質が不足している状態。

 

【脱水による体調の変化】

 A 水分不足

   脳血流低下:めまいや立ち眩み

   消化管の血流低下:食欲低下

   発刊の減少:体熱の上昇・発熱

   循環血漿量低下:脈が早くなる

 B 塩分や電解質不足

   しびれや筋肉痛・こむら返り・倦怠感・頭痛

 

【脱水の身近な症状】

   手足が冷たくなり、指先を押すと元のピンク色に戻り難い

   口腔内の乾燥

   手背の皮をつまむとすぐに戻らない

   頻脈で動悸がする

 

ではこのような症状が出たらどうしたらよいでしょうか?

もちろん、意識がもうろうとして、痙攣がみられるようであればただちに救急車を呼ぶことが大切です。

 

【水分の摂取】                                                                  

        初期の症状であれば、水や麦茶、スポーツ飲料をゆっくり飲みましょう。

    体重減少があり明らかに脱水であると感じるようであれば、吸収の良いブ 

    ドウ糖とナトリウムイオンを医学的知見から配合設計された経口飲料を飲

    むとよいでしょう。(市販では、OS-1)

 

【水分摂取量のめやす】

    成人であれば食べ物の水分を除き、1日約1L~1.5L、1回に100mlなら10回か  

    ら15回に分けて飲めると身体にやさしい水分補給となります。。

 

 

【その他の注意点】

    小さなお子さんは体温調節機能が未熟で、呼気や皮膚から水分が蒸発しや

    すいので要注意です。また成人と違って身長が低くいので、熱いコンクリー

    ト道路表面に近いことも気を付けてください。

    高齢の方は体内に蓄えている水分の比率が少なめですので注意が必要で

    す。

    十分な睡眠ときちんとした食事が基本であることは言うまでもなく規則正

    しい生活を送るように心掛けましょう。夏休み中は要注意です。

    

 

【部活動について】

    確かに、炎天下での運動が危険である事は誰もが認識しています。しかし

    ながら、湿度が高い日は、汗の蒸発がなく体内に熱がこもりやすくなって

    熱中症になりやすいので要注意です。体育館や柔道場、剣道場での部活

    動の生徒は気を付けてください

 

最後になりましたが、まだまだこれからも暑い日々が続くと思います。

家族や友人、ご近所同士お互いの相手のことを少し気にして、みんなで健やかな毎日を送りましょう。

 

 

 

澤田 実(澤田皮膚外科)

 


 

 

 

 

第48回 「関節軟骨って難しいな」(2018年7月)

 

 

医局に席があった頃、関節軟骨を人工的に作成する研究をした。家兎の膝関節から関節軟骨を採取し、軟骨細胞の培養を行い、関節軟骨を作成する研究だった。

 

一度傷ついた関節軟骨は修復されない。損傷が深部まで達すれば変形性関節症になる。変形性関節症に行われる手術は、関節鏡手術、骨切矯正術、人工関節置換術、移植術など多くの術式があり、重度の関節症には置換術が多く行われる。術後の関節機能は全廃となる。関節面のアライメントを整え、関節軟骨を作成して移植すれば、置換術は不要になると信じ、関節軟骨の研究をした。

 

 

関節軟骨は軟骨細胞がⅡ型コラーゲンやプロテオグリカンといった軟骨基質で形成されている。軟骨培養の技術的確立と軟骨基質作成の研究をした。

軟骨細胞培養は難しい。培養液の作成も難しく、マクロではうまくいったようでも、ミクロでは線維芽細胞様に変化してしまう。

事実、生体で軟骨欠損部に膜状の組織が形成されることがあるが、硝子軟骨ではなく線維軟骨である。軟骨基質の作成も難しかった。生体の関節軟骨は圧力に可塑性があり、押すと凹んで元に戻る。元に戻る際に関節液が基質内に入り込む。指導していただいた先生の提案で、基質に性質が似ているとのことでマンナンパウダーに培養液を混ぜてこんにゃく基質を作成した。

しかし、一般的に食用コンニャクを作るには熱を加えて固める。熱を加えたこんにゃく基質には軟骨細胞を封入できず、固める前にこんにゃく基質に細胞を混ぜても、熱を加えると細胞が死滅してしまい、満足のいく基質はできなかった。

 

数年前、ヒトiPS細胞由来軟骨細胞から足場材(軟骨基質)を使わずに軟骨組織を作成する培養法を確立したとの発表があった。

さすがiPS細胞だなと感激した。軟骨作成に苦労した者としては、一刻も早く臨床応用され、変形性関節症の治療の第一選択になると期待したい。

 

 

進上泰明(しんじょう整形外科クリニック)

 

 


 

                                                                                                

 

 

第47回 「肝癌診療の今昔」(2018年6月)

 

 

私は10年前に開業するまで25年間外科医でした。胃癌、大腸癌、膵癌の手術もし、最後は肝癌を専門としました。

35年前、獨協医大第2外科教室に入局した頃は、肝臓の手術は年に数例でした。肝機能正常なら肝臓は70%切除可能ですが、肝癌は、慢性肝炎・肝硬変の患者さんに発症します。肝機能が低下した患者さんの肝癌がどこまで切除できるのか、何を指標に判断するかは、全く手さぐりで混沌としていました。術後の合併症は多く、担当医は何日も泊まり込むのが当たり前でした。

 

今年4月5日に外科学会に出席し、肝臓外科の著しい進歩に驚きました。手術手技は標準化されて安全になり、3DCTで肝切除領域の血管走行が把握され、出血量は少量となり、合併症もなく短期間で退院するのが普通となりました。

 

一方、今回の学会で、C型肝炎が完治した後の肝癌発癌までの平均期間は、インターフェロン(IFN)治療後は平均4年、抗ウイルス剤(DAA)治療後は平均8か月という報告がありました。

IFNが持っていた肝癌発生抑制効果が、DAAには無いと考えられる事です。C型肝炎がDAAの登場により完治可能となり、肝癌の発生は、10~20年後には減少します。それまでは、C型肝炎の完治後でも長期間の経過観察が必要です。

また、今後は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からの肝癌が増加すると考えられ、慢性肝炎患者さんへの定期的検査の重要性は同様です。

 

 

佐久間 敦(さくま内科胃腸科クリニック)

 

 


 

 

 

第46回 「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」について(2018年5月)

 

 

 アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning:ACP)という言葉をお聞きになったことがありますでしょうか?簡単に言うと“もしものための話し合い”です。「意思決定能力が低下する前から、本人の意思を尊重して、ご家族さらには医療介護者が一緒になってケア全体の目標や具体的な治療・療養方針について話し合う過程(プロセス)」ということになります。

 

従来日本では、「死」について語ることは縁起でもないという理由から避けられる傾向にありました。しかし、人生の最後は必ず誰にでもやってきます。元気で決定能力のしっかりしている時点から、「何を大切にして、どのように生きたいか、どんな場所で、どのような最期を迎えたいのか」こうしたことを繰り返し話し合うことは、自分らしい、より良い人生を全うしていくことにつながっていきます。

 

 医師会では1市5町より委託を受けて、29年4月「在宅医療介護連携相談センターたておう」を開設いたしました(詳しい事業内容については、ホームページをご覧ください)。本年度は、「ACPの普及・啓発」を重要な取り組みの一つと考えて、1市5町各地区でミニ講演会を開催する予定です。多くの住民の皆様にご参加いただき、ACPについて理解を深めていただきたいと考えております。

 

 

竹越 亨(竹越医院)

 

 


 

 

 

第45回 「ものもらい(麦粒腫)」(2018年4月)

 

 

 麦粒腫は、まぶたの皮脂腺や汗腺、マイブーム線に細菌が感染して起こります。

まぶたが赤く腫れ、痛みがあります。治療は細菌感染が原因のため、抗生剤の点眼液や眼軟膏、内服薬を症状に応じて使用します。化膿した点が見られる場合は、切開してうみを出します。

 

一般に「ものもらい」といっていますけれど日本各地でいろんな言い方があります。この辺の地域では「めかいご」「めけご」と年配の方は言ってるようです。東北では「めっぱ」関西では「めばちこ」、ある地域では「ばか」ということもあります。患者さんにこれはものもらいですよと説明したら「ああ、ばかですね」と言われて、びっくりしたことがありました。

ちなみにポルトガル語では「テルソー」といいます。

 

又、よく聞かれるのが「うつりますか?学校へ行けますか」というのがあります。麦粒腫はうつりませんと言うとほっとされます。

 

眼科でうつる病気は「はやりめ」です。これはアデノウィルス感染によって起こる結膜炎です。発症してから治るまでに、2週間ほどかかります。アデノウィルスは感染力が非常に強いので、周り人に移さないように注意しましょう。

 

はやりめにかかったときの注意点は、手を流水と石けんでよく洗う、目をさわらない、タオルや洗面用具は、家族のものと別にする、学校や保育園は医師の許可が出るまで休むなどのことが必要です。重症では角膜混濁を起こすことがあり、注意が必要です。

        

 

 鈴木英司(鈴木眼科医院)

 

 


 

 

 

第44回 「花粉症(アレルギー性鼻炎)とは何か?」(2018年3月)

 

 

アレルギーとは、本来は体にとって有害でないような物質に対して、体が過剰に反応して起こる病気です。その物質(アレルギー原因物質)のことを、抗原(こうげん)と呼びます。特に鼻は外から様々な物質を吸い込むため抗原に対する反応が起こりやすく、鼻粘膜で起こったアレルギー反応によりアレルギー性鼻炎が生じます。原因物質が花粉の場合、アレルギー性鼻炎と目の結膜で起こった反応(アレルギー性結膜炎)などをひっくるめて花粉症と呼びます。

 

症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまりが主になりますが、花粉症の場合は目の症状(かゆみや涙目)に加えて、のど・皮膚のかゆみや咳などを訴える方もいます。アレルギー性鼻炎の抗原は大きく分けて、ハウスダストやダニなどのように1年を通じて症状を起こすものと、花粉のようにある特定の時期に症状を起こすもの、の2つがあります。

 

特にここ北関東では、花粉はスギ(2~4月)のみでなく、ハンノキ(1~3月)、ヒノキ(3~5月)、カモガヤ(5~7月)、オオアワガエリ(6~8月)、ブタクサ(8~10月)、ヨモギ(8~10月)、セイタカアワダチ(アキノキリンソウとも言い、10~11月)など、1年を通じて何がしかの花粉が飛んでいます。また花粉症の患者さんの中には、リンゴ・キウイ・モモ・サクランボ・バナナなどの果実を食べると口内~のどがイガイガしたり腫れぼったくなったり等の症状を訴える方がいますが、これは口腔アレルギー症候群という病気の可能性が高く十分な注意が必要です。

 

アレルギーが疑われた場合には、自分が何に対してアレルギーがあるのかをきちんと認識するのが重要です。そのため簡便な検査としては、採血によるアレルギー検査などがあります。検査によってお金もかかりますし、検査をしたからと言っても治療そのものに大きな違いは出ないかもしれません。しかし、アレルギーの原因が分かることで今後の対策が立てやすくなり、治療をするうえで最終的には大きなメリットになると思います。

 

花粉症を含めたアレルギー性鼻炎の治療法には様々なものがあり、自分でできるセルフケア(抗原の除去・回避)、適切な薬物療法、レーザー治療などの手術療法、体質改善を目指す舌下免疫療法などが挙げられます。花粉症でお悩みの方は、専門医を受診して自分に合った治療法を十分に相談され、納得したうえで治療を選択されることを是非お勧めします。

 

 

瀬嶋尊之(板倉耳鼻咽喉科クリニック)

 

 


 

 

第43回 「月経困難症」(2018年2月)

 

 

月経困難症とは月経に伴って生じる体や気分の不快な症状です。体の不調としては、腰痛、下腹部痛、頭痛、吐き気、下痢、便秘などがあります。心の不調としてはイライラ、眠気、不安感、気分の落ち込みなどがあげられます。

 

これらの症状とうまくつきあっていくには、体を冷やさない、適度に運動して血行をよくしておく、バランスのとれた食事を心がける、ストレスをためない、体調不良の時期には予定をつめこまない、重要事項の決定はしないなどの注意が必要かと思います。

 

さて、月経困難症の症状のうちの月経痛に関してですが、痛みのため学校や会社を休んでしまう、鎮痛薬を飲む回数が増えてきた、効かなくなってきた、などの症状がある場合は婦人科の病気が隠れている事があります。子宮筋腫や子宮内膜症です。10代でも手術をしなければならないほどひどくなっていた患者さんもいました。月経痛は我慢するしかないもの、子供を産めば治るなどというのはもはや迷信です。気になる症状があるときは、産婦人科を受診してみてください。

 

 

飯塚真理(まりレディスクリニック)

 

 


 

 

第42回 「スマホやり過ぎ注意」(2018年1月)

 

 

今や手放せなくなったスマートフォン(スマホ)。電車内の光景は異様ですね。歩きスマホや自転車・自動車のながら運転もあふれています。どこでもところ構わずツイートや写メと画像アップです。ネットサーフィンやゲーム、動画視聴など、端からみれば時間の「浪費」です。「時間どろぼう」とはよく言ったものです。ネット上の薄っぺらいやりとりから残念な結果を招く事件や事故も多いですね。確かに便利になりましたが、果たして本当にそこまで必要なものでしょうか。

 

スマホ漬けでは脳の「前頭前野」の血流・機能が低下するといわれています。記憶や思考、コミュニケーション能力や、集中力、感情のコントロールに関する部位です。キレやすい、仕事や勉強に集中できないなど、トラブルや事件につながりそうですね。思い当たるところはありませんか。

 

今やそのスマホが、成長期にある乳幼児から小中学生にまで繁殖中です。スマホ漬けの子どもたちがそのまま大人になって将来の日本は大丈夫でしょうか。使い方やルールはもちろん、マナーやモラルもきちんと身につけてほしいと思います。そのお手本はやはり大人ですよ。

 

 

小柳富彦(こやなぎ小児科)

 

 


 

 

第41回 「健康長寿」ということ(2017年12月)

 

 

「健康長寿」は誰しもが望む所であろう。

健やかに長生きにはどうするか、と聞かれることさえある。「こっちが聞きたいくらいで」と言いたいのだが、そこはまあ笑って適当に答えている。

しかし私も60代半ばを過ぎて深く関心を持つようになって来ている。

 

健康長寿を全うした著名人と言えば、日野原重明先生(105歳没)、そして文学者では高崎市出身の土屋文明(100歳没)、野上弥生子(99歳没)、土岐善麿(95歳没)、現在では中曽根康弘元首相(99歳)、瀬戸内寂聴(95歳)の諸氏が思い浮かぶ。

土岐善麿氏は90歳の時「長生きの秘訣」を問われて、「特に何もない。ただポカンと生きてきただけで」と答えられたという。

「まあ そんなところなのかな」とも思う。

 

最近、“Cognicise”という言葉を耳にする。“Cognition(認知)”と“Exercise(運動)”を合成した言葉で「認知機能を働かせながら同時に運動をする」ということ、つまり、たとえば「足腰を動かしながら少し難しい計算をする」など、「頭」と「身体」を同時に働かせることで心身共に老化を遅らせる効果があるという。

 

幕末の英傑「勝海舟」は、当時としては長寿の75歳で19世紀の末に没したが、晩年、請われて揮毫をする時に話をしながら書をしたためたという。海舟は老いても記憶力にすぐれ、過去の事跡を細部にいたるまで覚えていたとのこと。忙しく日々を過ごしながら“Cognicise”を実践していたのであろう。

 

もう一つ例をあげることにする。

私はある機縁で作家「中河与一」と近付きになることができた。新感覚派の旗手として横光利一、川端康成等と共に大正末~昭和初めに文壇に登場し、後に曽野綾子、萩原葉子を育てた。今ではあまり読まれなくなったと思うが、代表作「天の夕顔」は発表当時(昭和13年)ベストセラーとなり、現在でも文庫版で読むことができる。

 

昭和52年6月、私が大学生の時だったが、上高地で催される「ウェストン祭」に中河先生からお誘いを受け同行させて頂いた。

当時先生は80歳位だったが、祭の前日、電車の中で長い時間立ち続けることも苦にされず、大変お元気で若々しくあられた。(ちなみにウェストンは明治時代上高地を世界に紹介した人で、6月の第1日曜にこれを記念して現地で祭が催されている。)

翌日、多少傾斜のある道を歩かれた折、先生はぐったりと肩を落として疲れ切った様にして、まさしく「とぼとぼと」歩かれていた。同行の人に聞くと、あの様な歩き方は身体によけいな力が入らず、長く山歩きをするには大変楽な方法なのだそうな。40~50分位歩いたが、その後の先生はお疲れの様子は見られなかった。

先生は、平成6年97歳で亡くなられたが、今にして思えばあの歩き方のように生きて来られたのではないか、先生は穏やかなやさしい方で感情的になられることは滅多になかった。いつもゆったりと無理な力を入れずに過ごしてこられたのではないか、お訪ねした折はいつでも、日々届けられる手紙に目を通しながら、いろいろお話をして下さった。かつて長寿の代名詞だった泉重千代さんは「長寿の秘訣は、酒や煙草はほどほどに、そして決して怒らないこと」と言っていた様に思う。

 

日々穏やかに力まずに、そして、“Cognicise”を怠らずに過ごす。

私にはなかなかできそうにないが、これが「健康長寿」のコツなのではないか、と思っている。

 

 

川俣泰男(新橋病院)

 

 
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