健康コラム

 

 

第42回 「スマホやり過ぎ注意」(2018年1月)

 

 

今や手放せなくなったスマートフォン(スマホ)。電車内の光景は異様ですね。歩きスマホや自転車・自動車のながら運転もあふれています。どこでもところ構わずツイートや写メと画像アップです。ネットサーフィンやゲーム、動画視聴など、端からみれば時間の「浪費」です。「時間どろぼう」とはよく言ったものです。ネット上の薄っぺらいやりとりから残念な結果を招く事件や事故も多いですね。確かに便利になりましたが、果たして本当にそこまで必要なものでしょうか。

 

スマホ漬けでは脳の「前頭前野」の血流・機能が低下するといわれています。記憶や思考、コミュニケーション能力や、集中力、感情のコントロールに関する部位です。キレやすい、仕事や勉強に集中できないなど、トラブルや事件につながりそうですね。思い当たるところはありませんか。

 

今やそのスマホが、成長期にある乳幼児から小中学生にまで繁殖中です。スマホ漬けの子どもたちがそのまま大人になって将来の日本は大丈夫でしょうか。使い方やルールはもちろん、マナーやモラルもきちんと身につけてほしいと思います。そのお手本はやはり大人ですよ。

 

 

 

小柳富彦(こやなぎ小児科)

 

 


 

 

第41回 「健康長寿」ということ(2017年12月)

 

 

「健康長寿」は誰しもが望む所であろう。

健やかに長生きにはどうするか、と聞かれることさえある。「こっちが聞きたいくらいで」と言いたいのだが、そこはまあ笑って適当に答えている。

しかし私も60代半ばを過ぎて深く関心を持つようになって来ている。

 

健康長寿を全うした著名人と言えば、日野原重明先生(105歳没)、そして文学者では高崎市出身の土屋文明(100歳没)、野上弥生子(99歳没)、土岐善麿(95歳没)、現在では中曽根康弘元首相(99歳)、瀬戸内寂聴(95歳)の諸氏が思い浮かぶ。

土岐善麿氏は90歳の時「長生きの秘訣」を問われて、「特に何もない。ただポカンと生きてきただけで」と答えられたという。

「まあ そんなところなのかな」とも思う。

 

最近、“Cognicise”という言葉を耳にする。“Cognition(認知)”と“Exercise(運動)”を合成した言葉で「認知機能を働かせながら同時に運動をする」ということ、つまり、たとえば「足腰を動かしながら少し難しい計算をする」など、「頭」と「身体」を同時に働かせることで心身共に老化を遅らせる効果があるという。

 

幕末の英傑「勝海舟」は、当時としては長寿の75歳で19世紀の末に没したが、晩年、請われて揮毫をする時に話をしながら書をしたためたという。海舟は老いても記憶力にすぐれ、過去の事跡を細部にいたるまで覚えていたとのこと。忙しく日々を過ごしながら“Cognicise”を実践していたのであろう。

 

もう一つ例をあげることにする。

私はある機縁で作家「中河与一」と近付きになることができた。新感覚派の旗手として横光利一、川端康成等と共に大正末~昭和初めに文壇に登場し、後に曽野綾子、萩原葉子を育てた。今ではあまり読まれなくなったと思うが、代表作「天の夕顔」は発表当時(昭和13年)ベストセラーとなり、現在でも文庫版で読むことができる。

 

昭和52年6月、私が大学生の時だったが、上高地で催される「ウェストン祭」に中河先生からお誘いを受け同行させて頂いた。

当時先生は80歳位だったが、祭の前日、電車の中で長い時間立ち続けることも苦にされず、大変お元気で若々しくあられた。(ちなみにウェストンは明治時代上高地を世界に紹介した人で、6月の第1日曜にこれを記念して現地で祭が催されている。)

翌日、多少傾斜のある道を歩かれた折、先生はぐったりと肩を落として疲れ切った様にして、まさしく「とぼとぼと」歩かれていた。同行の人に聞くと、あの様な歩き方は身体によけいな力が入らず、長く山歩きをするには大変楽な方法なのだそうな。40~50分位歩いたが、その後の先生はお疲れの様子は見られなかった。

先生は、平成6年97歳で亡くなられたが、今にして思えばあの歩き方のように生きて来られたのではないか、先生は穏やかなやさしい方で感情的になられることは滅多になかった。いつもゆったりと無理な力を入れずに過ごしてこられたのではないか、お訪ねした折はいつでも、日々届けられる手紙に目を通しながら、いろいろお話をして下さった。かつて長寿の代名詞だった泉重千代さんは「長寿の秘訣は、酒や煙草はほどほどに、そして決して怒らないこと」と言っていた様に思う。

 

日々穏やかに力まずに、そして、“Cognicise”を怠らずに過ごす。

私にはなかなかできそうにないが、これが「健康長寿」のコツなのではないか、と思っている。

 

 

川俣泰男(新橋病院)

 

 
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