健康コラム

 

 

第36回 「フレイルと骨粗鬆症」(2017年7月)

 

 

つまづく・転ぶなど身体機能の低下をフレイルと言います。(ロコモティブシンドロームやサルコペニアとほぼ同じ)。しかしフレイルは精神・心理的(認知症、うつ)や社会的(独居、閉じこもり)な機能の低下も含む概念です。フレイル状態の高齢者は骨折すると歩けなくなったり、痛みで寝たきりになり生活の質や寿命にも影響を与えます。

 

私は内科医ですが骨粗鬆症の予防と治療に力を入れています。整形外科医が診察する時には骨変形や骨折など骨粗鬆症が進行していることが多く、内科医は健康診断や高血圧などの治療中に早期から骨粗鬆症への介入が行えると考えています。

 

骨は破骨細胞で壊され骨芽細胞で作られる骨リモデリングを行っている臓器です。骨粗鬆症の診断は骨密度で行い若年成人平均値の70%未満(脆弱性骨折例では80%未満)と定義されています。閉経後は女性ホルモンによる破骨細胞の抑制が働かなくなり、多くの女性は骨粗鬆症になり易い状態となります。日本では約1280万人(男性300万人、女性980万人)が骨粗鬆症と言われています。

治療薬は多種類ありますが、ビスホスホネートは骨密度と骨折予防に有効性が証明されていて多く用いられます。ビスホスホネートは顎骨壊死症という副作用が報告されており、歯槽膿漏など細菌感染から起こることが知られています。骨粗鬆症の治療開始前に歯科医院を受診すれば安心です、また骨粗鬆症の治療をしている場合はお薬手帳を歯科医に見せて下さい。

 

認知症や薬が飲めない人は骨粗鬆症の治療が困難でしたが、口腔内ケアができれば現在は注射薬が使用でき、当院関連施設では実際に骨折を減らすことが出来ています。

在宅や高齢者施設での骨粗鬆症の積極的治療は、骨折発症を減少させ健康寿命の維持や医療費節減になると思います。欧米では骨折は減少しているのに、日本では急速な高齢化と供に増え続けています。フレイルもリハビリなどで社会と関わりを持つことで予防可能です。正しい知識と関心を持ち、フレイルと骨粗鬆症の対策を行うことは社会的にも重要な課題と考えています。

 

 

田中 亨(たなか医院)

 

 


 

 

 

第35回 「大人にも予防接種が必要?」(2017年6月)

 

 

世間一般に「予防接種は子どものためのもの」というイメージがあります。

しかし昨今、話題になる麻疹小流行や風疹の患者さんは子どもではなく「大人」です。

 

特に風疹については、本人は軽い症状で済むものの、妊婦さんが罹るとお腹の赤ちゃんに影響が出る「先天性風疹症候群」のリスクがあり、一時期社会問題になりました。

現代は「感染症の被害者にならない」だけでなく「加害者にならない」という認識も要求されるようになったのです。

 

大人にも予防接種が必要なのでしょうか?

 

その感染症に罹る可能性は、血液中抗体価を検査するとわかります。

大人の抗体保有率を国立感染症研究所のホームページで確認してみました。

 

(日本脳炎)  30歳以上で抗体がない大人が多い

(百日咳)   3歳以降抗体が減り5歳頃が最低、その後上昇(罹患して抗体獲得)

(破傷風)   40歳以降の大人はほとんど抗体がない

(麻疹)    大人の10%は抗体がない

(風疹)    中年男性の20%(約400万人)は抗体がない

(おたふくかぜ)大人の20~30%は抗体がない

(水痘)    ほぼ100%抗体を保有する

 

日本脳炎、百日咳、破傷風については小児期に接種したワクチンの効果がなくなってしまうことが明らかです。つまり、年齢に応じてワクチン追加接種が必要です。

麻疹、風疹、おたふくかぜは各個人の免疫状態を評価して接種を検討する必要がありそうです。

 

諸外国では上記に気づき、既に対策を取り始めました。

例えば米国では、赤ちゃんを百日咳から守るために、妊婦に百日咳ワクチンを含んだ予防接種を推奨しています。百日咳ワクチンの効果は数年以内になくなってしまうので、妊娠するたび接種します。

 

一方日本では、残念ながら何ら対策が取られていません。

そんな中、日本は「2020年の東京オリンピックまでに風疹排除」を目標に掲げました。

現状では達成は困難と思われ、抜本的な対策を取る必要があると思います。

 

 

武井克己(たけい小児科・アレルギー科)

 

 


 

 

 

第34回 「胃がん検診について」(2017年5月)

 

胃がんは最近減少傾向にあるがんですが、がんの死亡数では男性では肺がんについで2位、女性では大腸がん、肺がんについで3位と依然として多いがんです。

 

館林市、邑楽郡では胃がん検診はバリウムによるX線検診で行われてきました。しかし受診率は年々低下傾向にありその向上が急務でした。

 

このなかで館林市では平成24年から「胃がんリスク検診」を導入しました。

これは血液検査で胃がんの原因となるピロリ菌感染の有無とピロリ菌感染による胃粘膜の変化を調べ、「胃がんにかかりやすいかどうか」を知ることができます。血液検査のみですので気軽に受診ができることが特徴です。胃がんリスク検診の受診率は年々向上し平成27年度は対象者の30%の方に受診していただけました。

 

さらに本年度からは館林市の胃がん検診に従来からのX線検診に加え内視鏡検診が導入されます。

X線検診による胃がん検診は古くから歴史があり死亡率減少効果が証明されています。内視鏡による検診は一部の自治体で行われてきましたが、データが蓄積され内視鏡検診にも死亡率減少効果があることがはっきりしてきました。

これを受け2014年に厚生労働省から内視鏡による検診も可能であるとの主旨の通達がありました。その後内視鏡による胃がん検診を開始する自治体が増えています。

 

一般にX線検診では胃がんの発見率は1000人に1~2人程度ですが内視鏡検診では4~6人程度の胃がんが発見されると言われています。

最近は鼻から細い内視鏡を挿入し胃内を観察する経鼻内視鏡が普及し、比較的楽に内視鏡検査ができるようになりました。またカメラの画質もめざましく向上しております。内視鏡検診の導入により受診率の向上が期待され、効率的に胃がんの方を発見し、胃がんによる死亡を一人でも減らすことが期待されます。

 

館林市の内視鏡検診は本年度は導入し始めということもあり750名限定となりますが今後更に多くの皆様が内視鏡検診を受けられるよう館林市邑楽郡医師会としても努力したいと考えております。

平成29年7月6日より受付開始となります。詳しくは館林市健康推進課までお問い合せください。

 

 

海宝雄人(海宝病院)

 

 


 

 

第33回 「除菌ノスゝメ」(2017年4月)

 

みなさんは “ピロリ菌“ という細菌の名前をご存じでしょうか?

ピロリ菌はヒトの胃粘膜に棲みつき、萎縮性胃炎や胃潰瘍、そして胃がんの発症に深くかかわっていると考えられています。

 

さて、ピロリ菌に感染しているのかどうか、どのように調べるのでしょうか。

それは、内視鏡検査の時に胃の組織を採取して行う迅速ウレアーゼ試験や鏡検法、血液検査でピロリ菌に対する抗体値を測定する方法、便の中に排泄されるピロリ菌の抗原を検出する方法、13Cという炭素の同位元素を含んだ尿素を内服して行う尿素呼気試験などがあります。

 

では、ピロリ菌に感染していることが分かった場合はどうすれば良いのでしょうか。

2013年には、ピロリ感染胃炎に対する除菌治療が保険の適応となりました。除菌治療は、アモキシシリン、クラリスロマイシンという2種類の抗菌薬と胃酸を抑える薬を1週間内服します。この治療方法で9割前後の方が除菌に成功することを期待できます。除菌が出来なかった場合には、次の治療として、クラリスロマイシンをメトロニダゾールに替えた組合せがあります。

 

ピロリ菌に感染している人は、感染していない人に比べて、胃がんになるリスクが高いことが報告されています。つまり、除菌治療をすることで、胃がんの予防効果が高くなると考えられています。

ピロリ菌の検査、治療について、もっと詳しくお知りになりたい方は、ぜひ、かかりつけ医やお近くの医療機関にご相談してください。

 

 

高橋常浩(橋田内科クリニック)

 

 


 

 

 

第32回 「花粉症に対する薬物治療について」(2017年3月)

 

一昔前のアレルギーの薬というと眠くなるイメージがありますが、最近は眠気も抑えられて効果も強い薬が開発・使用されています。

具体的に花粉症で用いる主な薬は、下記のようなものがあります。

 

①第1世代抗ヒスタミン薬・・・即効性だが眠気が強い。従来の市販薬がこれに相当する。

 

②第2世代抗ヒスタミン薬・・・医療機関での治療薬の基本。眠気の抑えられた薬も多い。

             最近では薬局でも売られるようになってきている。

 

③抗ロイコトリエン薬・・・特に鼻づまりに効果あり。

 

④ステロイド点鼻薬 ・・・最近のものは効果が高く、全身的な副作用はほとんど無い。

 

⑤抗ヒスタミン点眼薬・・・目のかゆみに対して処方。

 

⑥ステロイド点眼薬・・・⑤で効かないような症状が強いケースに対して用いる。

 

⑦漢方薬・・・小青竜湯、麻黄附子細辛湯など。

 

以上のような薬を単独または複数組み合わせて、症状や鼻内所見など考慮しながら、患者さん各人に適するように処方していきます。特に花粉症があるとあらかじめわかっている人は、症状が出始めたごく初期から薬を始めると効果的だと言われています(初期療法)。

 

なお、注射などでステロイドを直接体に入れる方法は人によって高い効果がありますが、ステロイド点鼻薬とは異なり全身に及ぼす影響は大きく副作用も無視できません。花粉症が毎年のものと考えれば、そのような治療を毎年行っていくのは副作用の面でリスクが高く、とてもお勧めできるものではないと考えます。

 

 

瀬嶋尊之(板倉耳鼻咽喉科クリニック)

 

 


 

 

 

第31回 「インフルエンザについて」(2017年2月)

 

寒さの厳しい季節となりました。例年12月から3月にかけて流行することが多いインフルエンザですが、今シーズンも2017年1月に入り少しずつ患者数が増えてきました。

 

インフルエンザはかぜ症候群の一つですが、全身症状や高熱を伴う点がいわゆる感冒とは異なるところです。典型的な症状は突然の発症、38℃以上の高熱、頭痛や関節痛、筋肉痛などの全身症状、鼻汁や咽頭痛などの上気道症状や咳や痰などの呼吸器症状ですが、最近では微熱の場合や無熱(熱のない)のインフルエンザ患者が存在することがわかってきました。

 

高齢者や呼吸器の病気や心臓の病気がある方はインフルエンザの症状が重くなったり、元々の病気が悪化したり、細菌性肺炎を合併することが多く入院や死亡の重大な原因となります。

小児(特に乳幼児)では高熱、熱性けいれん、気管支炎、脱水などにより入院の原因となり、またまれにインフルエンザの発熱から早期の段階(多くは24-28時間以内)で嘔吐や異常行動、意識障害、けいれんなどの症状が出現する急性脳症(インフルエンザ脳症)を起こすことがあり注意が必要です。

 

インフルエンザウイルスの潜伏期間は短く24-48時間で接触感染や咳やくしゃみによる飛沫感染が主ですが大規模な流行には飛沫として飛散したウイルスによる空気感染の関与が大きいと考えられています。インフルエンザ流行期には人込みや繁華街への外出を控えること、外出時はマスクを着用してうがいや手洗いを行うこと、室内の十分な加湿をすること、十分な休息とバランスの良い食事をとること、流行前にインフルエンザワクチンを接種することが予防の基本となります。

 

インフルエンザの診断は症状のみでは容易ではなく迅速診断キットを併用することになります。但し発症早期のウイルスが少ない時期には迅速診断キットで陰性(インフルエンザの反応がでない)となり、半日から1日後に再検査をすると陽性になることがあるため発症からの時間経過には注意が必要です。

治療ですがインフルエンザには基本的にウイルス感染であるため、十分な水分補給や休息、安静による治療と咳止めや解熱剤などによる症状に合わせた治療(対症療法)が主な治療となります。

 

また、現在日本では内服薬(タミフル)、吸入薬(リレンザ、イナビル)、点滴注射薬(ラピアクタ)の4種類のインフルエンザ治療薬がありますが、医師がその必要性を判断しての処方となりますので、

受診した医療機関でご相談ください。

 

寺内政也(寺内医院)

 
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