健康コラム

 

第40回 11月14日は「世界糖尿病デー」です。(2017年11月)

 

 

わが国の糖尿病の患者数については、厚生労働省が4~5年ごとに調査を続けています。

 

調査開始時の1997年では、「糖尿病が強く疑われる」成人男女が約690万人でしたが、その後どんどん増えて、2016年の調査では前回推計した12年調査から約50万人増え、初めて1000万人に達しました。「糖尿病予備軍の人」を合わせた数は約2000万人で、成人男性の28.5%、女性の21.4%を占めます。

これはすなわち成人の4~5人に1人が糖尿病のリスクをもっていることになります。

 

糖尿病の大半を占める2型糖尿病は、遺伝的なものに加え、生活習慣によって誘発される病気です。

 

肥満、過食、高脂肪・高カロリーに偏った食事、運動不足などが糖尿病の危険因子といえます。なかでも最大の危険因子が肥満、特に内臓脂肪型肥満で、「メタボ」があると糖尿病の発症リスクは5倍に達するといわれています。血糖値が正常よりちょっと高い、けれどもまだ糖尿病にはなっていない。

この予備軍の段階で、いかに肥満を解消できるかが、糖尿病リスクを減らす一番のポイントです。

このことをぜひ忘れないでいただきたいと思います。  

 

11月14日は「世界糖尿病デー」です。生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。

 

笠原 隆行(かさはら内科医院)

 

 


 

 

第39回 「乳がんの手術方法は進歩している」 (2017年10月)

 

 

毎年10月は「乳がん月間(ピンクリボン月間)」です。

 

乳がんの治療は、外科的治療である手術が中心で、それに放射線治療、薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤、分子標的治療)を組み合わせた集学的治療が行われます。今回は乳がんの手術がどのように変化、進歩しているかをご紹介したいと思います。

 

乳がんの手術はどんどん患者さんの負担が少ない方法に変化してきました。大きな変化は三つあると思います。

  1.乳房を残す手術が可能になった。

  2.リンパ節を残す手術が可能になった。

  3.乳房の再建手術が広まった。

 

約30年前、私が医者になった頃の乳がんの手術は、乳房を全部切除し、胸の筋肉(大胸筋および小胸筋)とわきの下のリンパ節も全部取ってしまうのが、一般的でした。この手術方法を定型的乳房切除術と言って、標準的な手術方法でした。さらに進行した乳がんの患者さんには、肋骨が胸骨(胸の真ん中の骨)にくっつく部分を何本か切って、この部分のリンパ節も摘出したり、鎖骨の上のリンパ節を取り除く、拡大乳房切除術が行われていました。以前は、手術によって(メスの力で)、広く大きく取ることが乳がんをなおす一番の方法と考えられていたのです。逆に、大胸筋や小胸筋を残す手術は縮小手術といわれていました。

 

現在は、多くの症例で乳房を残す手術、乳房温存手術が行われています。これが第1の変化です。乳がんの大きさや乳がんができた場所、広がり具合によって、この手術が可能です。ただし、乳房を温存した場合は、手術後に乳房の放射線治療を行うことが重要です。手術で乳がんのほとんど全てを切除し、かすかに残っているかも知れないがん細胞は放射線で治療しようということです。定型的乳房切除術や拡大乳房切除術は全く行われておりません。乳房を切除する場合でも、以前の縮小手術(胸筋温存乳房切除術)が現在の標準です。

 

乳がんの手術を受けた後に腕がむくむということを聞いたことがあるでしょうか?わきの下リンパ節を全部摘出することにより、腕のリンパ浮腫が起こることがあります。乳がんに限らず、がんはリンパ節に転移すると考えられるので、手術でリンパ節も取り除くことが必要とされてきました。しかし、乳がんの診断技術の向上により、リンパ節に転移していない状態で手術を受けられる患者さんが増えてきました。リンパ節を摘出しないですめば、腕がむくむことが少なくなる、それが第2の変化でセンチネルリンパ節生検と言います。センチネルリンパ節とは、乳がんの転移の見張り番のようなリンパ節で、手術中に特殊な薬剤と方法で、小さい傷でほじくるようにして取り出します。手術中に病理検査を行い、転移がなければそれ以上のリンパ節は取らないですむという考え方です。これにより大勢の患者さんがわき下のリンパ節を取らなくてすむことになりました。

 

この二つの変化は、乳がんの治療に対する考え方が以前と比べて大きく変わってきたことによります。乳房やリンパ節を全部取らなくても、手術後に放射線治療や薬物療法を行うことにより、がんの再発、特に命に関わるような全身への再発(遠隔転移)の危険性には大きな差がないことがわかったのです。放射線治療と薬物療法という援護射撃(補助療法)の進歩、そして、手術で切除する範囲が少なくなっても再発する危険性は大きくならないことを証明するための研究が行われ、十分な化学的根拠が得られたことが乳がん治療の大きな進歩につながってきました。

 

乳房を切除することが必要な場合でも、乳房の再建手術が受けられますが、以前はお腹や背中の筋肉を使って乳房の膨らみを作る方法(自家組織移植)のみが保険でできて、人工乳房(インプラント)を用いる方法は保険適応外(自費)でしかできませんでした。これが、数年前に人工乳房を使う方法も保険でできるようになりました。これが第3の変化です。体に負担が少ない方法で乳房を再建することが保険でできるようになったのです。自家組織移植と人工乳房のそれぞれに利点と欠点があり、必ずしも人工乳房がよいとは言えませんが、乳房を再建する手術が次第に広まってきています。

 

このように、乳がんの手術方法は患者さんの負担が少ない方法に変わってきています。今後もますます乳がんの研究は進み、更に負担の少ない治療法になっていくと思われます。しかし、まずは早期に発見することが重要です。月1回程度の自己検診と定期的な乳がん検診を心がけましょう。

 

 

堀井吉雄(堀井乳腺外科クリニック)

 

 


 

 

第38回 「血圧をご家庭で測ってみましょう」(2017年9月)

 

 

会社の健康診断や市や町の住民健診で、「血圧が高くなっています」という通知が来た方もいらっしゃると思います。

判定が要医療とか要精検になっていれば、医療機関を受診してください。

 

では要経過観察になっているときは、どうしますか。

上の血圧(収縮期血圧)が140~159または下の血圧(拡張期血圧)が90~99がこの要経過観察になります。何もしないという方もいると思いますが、ちょっと心配だなという方もいると思います。

まずは、ご自分の血圧がどのくらいになっているか、測ってみましょう。血圧計は家電量販店やホームセンターでも売っています。ご家庭で血圧を測ることはとても大切なことです。血圧は一日の中で変動していますし、健診会場では緊張して普段よりも高い血圧になっていることもあります。

 

ではどのように測ったらよいでしょうか。

血圧計は、上腕で測るタイプのものが望ましいです。手首や指で測るものは測定が簡単ですが、測定値の正確さに欠けます。測定の仕方は下記のとおりです。

 

①原則として背もたれつきの椅子に足を組まずに座って、1~2分安静にします。会話はしません。

 

②血圧は、2回測ってその平均を記録します。

 

③朝、晩の2つの時間帯で測ります。

 朝の場合)起きてから1時間以内の服薬前、朝食前に、排尿をすませてから測ります。

 晩の場合)就寝前に測ります。入浴後1時間以上あけた方が望ましいです。

 

この条件で測って測定値が上の血圧が135以上または下の血圧が85以上になっていれば高血圧です。

軽度の高血圧であれば、塩分を控えたり、肥満のある方は体重を減らすことで血圧を下げられる可能性があります。

まずはご自分の血圧の値を知ることから始めてみましょう。

 

 

藤原憲昭(藤原医院)

 

 


 

 

 

第37回 「甲状腺が腫れてますよ」(2017年8月)

 

 

乳癌検診と一緒に甲状腺検診を受ける機会があると思いますが、医師から「甲状腺が腫れてますよ」と、初めて指摘される方もいらっしゃるはずです。

甲状腺は、のど仏にある重さが15g前後のホルモンを作る器官です。大きく腫れていれば家族や友人から指摘されることもありますが、なかなか自分では判りづらいものです。

甲状腺の腫れ自体は判りづらくても、動悸や異常な発汗、暑がりになった、むくんできた等の症状がある場合、甲状腺の病気が疑われます。女性なら生理不順も現れやすいです。

 

甲状腺の腫れが起こる代表的な病気として、バセドウ病、橋本病、甲状腺腫瘍などがあります。

検診で見つかるものの多くが、単純性甲状腺腫と橋本病です。

 

単純性甲状腺腫は、ただ他人より甲状腺が大きいだけ、くらいに考えてください。血液検査と超音波検査だけで診断できます。経過観察で大丈夫です。

橋本病の方の甲状腺は、少し硬く、ゴツゴツした感じがします。甲状腺自己抗体が陽性であれば、橋本病と診断しています。さらに甲状腺機能が低下すると、むくみ、体重増加、寒がり、声のかすれなどの症状が出ます。低下症になったら甲状腺ホルモン(レボチロキシンナトリウム)を生涯服用しなくてはなりません。

バセドウ病はすでに述べたように、動悸や発汗、手の震えなどが現れるので、すでに医療機関を受診されている方が多く、検診で初めて見つかるケースはごく初期の方を除けば稀です。バセドウ病の方の甲状腺腫は、びまん性甲状腺腫といって、甲状腺全体が腫れ、あまり硬い感じが無く、表面も平滑です。

 

みなさんが最も心配されるのが甲状腺腫瘍です。悪性すなわち甲状腺癌やリンパ腫は、それほど多くはありません。

悪性・良性の鑑別は、触診、超音波検査、細胞診で行いますが、たとえ甲状腺癌でも「手遅れ」というケースはめったにありません。

その多くが乳糖癌や濾胞癌のような悪性度の低い分化癌だからです。昨年、私が都内の甲状腺専門病院に紹介した乳頭癌の女性は担当医から「手術は慌てなくて良いから、半年後ですね」と言われびっくりしたそうです。

甲状腺の悪性リンパ腫は、橋本病に合併することがあり、診断が確定できないこともありますが、きわめて稀な病気です。

 

最後に「甲状腺の病気が原因で亡くなられる方は非常に少ない」という事実は、多くの医師の共通認識であることを述べておきます。

 

 

平岩正基(いたくら内科クリニック)

 

 


 

 

 

第36回 「フレイルと骨粗鬆症」(2017年7月)

 

 

つまづく・転ぶなど身体機能の低下をフレイルと言います。(ロコモティブシンドロームやサルコペニアとほぼ同じ)。しかしフレイルは精神・心理的(認知症、うつ)や社会的(独居、閉じこもり)な機能の低下も含む概念です。フレイル状態の高齢者は骨折すると歩けなくなったり、痛みで寝たきりになり生活の質や寿命にも影響を与えます。

 

私は内科医ですが骨粗鬆症の予防と治療に力を入れています。整形外科医が診察する時には骨変形や骨折など骨粗鬆症が進行していることが多く、内科医は健康診断や高血圧などの治療中に早期から骨粗鬆症への介入が行えると考えています。

 

骨は破骨細胞で壊され骨芽細胞で作られる骨リモデリングを行っている臓器です。骨粗鬆症の診断は骨密度で行い若年成人平均値の70%未満(脆弱性骨折例では80%未満)と定義されています。閉経後は女性ホルモンによる破骨細胞の抑制が働かなくなり、多くの女性は骨粗鬆症になり易い状態となります。日本では約1280万人(男性300万人、女性980万人)が骨粗鬆症と言われています。

治療薬は多種類ありますが、ビスホスホネートは骨密度と骨折予防に有効性が証明されていて多く用いられます。ビスホスホネートは顎骨壊死症という副作用が報告されており、歯槽膿漏など細菌感染から起こることが知られています。骨粗鬆症の治療開始前に歯科医院を受診すれば安心です、また骨粗鬆症の治療をしている場合はお薬手帳を歯科医に見せて下さい。

 

認知症や薬が飲めない人は骨粗鬆症の治療が困難でしたが、口腔内ケアができれば現在は注射薬が使用でき、当院関連施設では実際に骨折を減らすことが出来ています。

在宅や高齢者施設での骨粗鬆症の積極的治療は、骨折発症を減少させ健康寿命の維持や医療費節減になると思います。欧米では骨折は減少しているのに、日本では急速な高齢化と供に増え続けています。フレイルもリハビリなどで社会と関わりを持つことで予防可能です。正しい知識と関心を持ち、フレイルと骨粗鬆症の対策を行うことは社会的にも重要な課題と考えています。

 

 

田中 亨(たなか医院)

 

 


 

 

 

第35回 「大人にも予防接種が必要?」(2017年6月)

 

 

世間一般に「予防接種は子どものためのもの」というイメージがあります。

しかし昨今、話題になる麻疹小流行や風疹の患者さんは子どもではなく「大人」です。

 

特に風疹については、本人は軽い症状で済むものの、妊婦さんが罹るとお腹の赤ちゃんに影響が出る「先天性風疹症候群」のリスクがあり、一時期社会問題になりました。

現代は「感染症の被害者にならない」だけでなく「加害者にならない」という認識も要求されるようになったのです。

 

大人にも予防接種が必要なのでしょうか?

 

その感染症に罹る可能性は、血液中抗体価を検査するとわかります。

大人の抗体保有率を国立感染症研究所のホームページで確認してみました。

 

(日本脳炎)  30歳以上で抗体がない大人が多い

(百日咳)   3歳以降抗体が減り5歳頃が最低、その後上昇(罹患して抗体獲得)

(破傷風)   40歳以降の大人はほとんど抗体がない

(麻疹)    大人の10%は抗体がない

(風疹)    中年男性の20%(約400万人)は抗体がない

(おたふくかぜ)大人の20~30%は抗体がない

(水痘)    ほぼ100%抗体を保有する

 

日本脳炎、百日咳、破傷風については小児期に接種したワクチンの効果がなくなってしまうことが明らかです。つまり、年齢に応じてワクチン追加接種が必要です。

麻疹、風疹、おたふくかぜは各個人の免疫状態を評価して接種を検討する必要がありそうです。

 

諸外国では上記に気づき、既に対策を取り始めました。

例えば米国では、赤ちゃんを百日咳から守るために、妊婦に百日咳ワクチンを含んだ予防接種を推奨しています。百日咳ワクチンの効果は数年以内になくなってしまうので、妊娠するたび接種します。

 

一方日本では、残念ながら何ら対策が取られていません。

そんな中、日本は「2020年の東京オリンピックまでに風疹排除」を目標に掲げました。

現状では達成は困難と思われ、抜本的な対策を取る必要があると思います。

 

 

武井克己(たけい小児科・アレルギー科)

 

 


 

 

 

第34回 「胃がん検診について」(2017年5月)

 

胃がんは最近減少傾向にあるがんですが、がんの死亡数では男性では肺がんについで2位、女性では大腸がん、肺がんについで3位と依然として多いがんです。

 

館林市、邑楽郡では胃がん検診はバリウムによるX線検診で行われてきました。しかし受診率は年々低下傾向にありその向上が急務でした。

 

このなかで館林市では平成24年から「胃がんリスク検診」を導入しました。

これは血液検査で胃がんの原因となるピロリ菌感染の有無とピロリ菌感染による胃粘膜の変化を調べ、「胃がんにかかりやすいかどうか」を知ることができます。血液検査のみですので気軽に受診ができることが特徴です。胃がんリスク検診の受診率は年々向上し平成27年度は対象者の30%の方に受診していただけました。

 

さらに本年度からは館林市の胃がん検診に従来からのX線検診に加え内視鏡検診が導入されます。

X線検診による胃がん検診は古くから歴史があり死亡率減少効果が証明されています。内視鏡による検診は一部の自治体で行われてきましたが、データが蓄積され内視鏡検診にも死亡率減少効果があることがはっきりしてきました。

これを受け2014年に厚生労働省から内視鏡による検診も可能であるとの主旨の通達がありました。その後内視鏡による胃がん検診を開始する自治体が増えています。

 

一般にX線検診では胃がんの発見率は1000人に1~2人程度ですが内視鏡検診では4~6人程度の胃がんが発見されると言われています。

最近は鼻から細い内視鏡を挿入し胃内を観察する経鼻内視鏡が普及し、比較的楽に内視鏡検査ができるようになりました。またカメラの画質もめざましく向上しております。内視鏡検診の導入により受診率の向上が期待され、効率的に胃がんの方を発見し、胃がんによる死亡を一人でも減らすことが期待されます。

 

館林市の内視鏡検診は本年度は導入し始めということもあり750名限定となりますが今後更に多くの皆様が内視鏡検診を受けられるよう館林市邑楽郡医師会としても努力したいと考えております。

平成29年7月6日より受付開始となります。詳しくは館林市健康推進課までお問い合せください。

 

 

海宝雄人(海宝病院)

 

 


 

 

第33回 「除菌ノスゝメ」(2017年4月)

 

みなさんは “ピロリ菌“ という細菌の名前をご存じでしょうか?

ピロリ菌はヒトの胃粘膜に棲みつき、萎縮性胃炎や胃潰瘍、そして胃がんの発症に深くかかわっていると考えられています。

 

さて、ピロリ菌に感染しているのかどうか、どのように調べるのでしょうか。

それは、内視鏡検査の時に胃の組織を採取して行う迅速ウレアーゼ試験や鏡検法、血液検査でピロリ菌に対する抗体値を測定する方法、便の中に排泄されるピロリ菌の抗原を検出する方法、13Cという炭素の同位元素を含んだ尿素を内服して行う尿素呼気試験などがあります。

 

では、ピロリ菌に感染していることが分かった場合はどうすれば良いのでしょうか。

2013年には、ピロリ感染胃炎に対する除菌治療が保険の適応となりました。除菌治療は、アモキシシリン、クラリスロマイシンという2種類の抗菌薬と胃酸を抑える薬を1週間内服します。この治療方法で9割前後の方が除菌に成功することを期待できます。除菌が出来なかった場合には、次の治療として、クラリスロマイシンをメトロニダゾールに替えた組合せがあります。

 

ピロリ菌に感染している人は、感染していない人に比べて、胃がんになるリスクが高いことが報告されています。つまり、除菌治療をすることで、胃がんの予防効果が高くなると考えられています。

ピロリ菌の検査、治療について、もっと詳しくお知りになりたい方は、ぜひ、かかりつけ医やお近くの医療機関にご相談してください。

 

 

高橋常浩(橋田内科クリニック)

 

 


 

 

 

第32回 「花粉症に対する薬物治療について」(2017年3月)

 

一昔前のアレルギーの薬というと眠くなるイメージがありますが、最近は眠気も抑えられて効果も強い薬が開発・使用されています。

具体的に花粉症で用いる主な薬は、下記のようなものがあります。

 

①第1世代抗ヒスタミン薬・・・即効性だが眠気が強い。従来の市販薬がこれに相当する。

 

②第2世代抗ヒスタミン薬・・・医療機関での治療薬の基本。眠気の抑えられた薬も多い。

             最近では薬局でも売られるようになってきている。

 

③抗ロイコトリエン薬・・・特に鼻づまりに効果あり。

 

④ステロイド点鼻薬 ・・・最近のものは効果が高く、全身的な副作用はほとんど無い。

 

⑤抗ヒスタミン点眼薬・・・目のかゆみに対して処方。

 

⑥ステロイド点眼薬・・・⑤で効かないような症状が強いケースに対して用いる。

 

⑦漢方薬・・・小青竜湯、麻黄附子細辛湯など。

 

以上のような薬を単独または複数組み合わせて、症状や鼻内所見など考慮しながら、患者さん各人に適するように処方していきます。特に花粉症があるとあらかじめわかっている人は、症状が出始めたごく初期から薬を始めると効果的だと言われています(初期療法)。

 

なお、注射などでステロイドを直接体に入れる方法は人によって高い効果がありますが、ステロイド点鼻薬とは異なり全身に及ぼす影響は大きく副作用も無視できません。花粉症が毎年のものと考えれば、そのような治療を毎年行っていくのは副作用の面でリスクが高く、とてもお勧めできるものではないと考えます。

 

 

瀬嶋尊之(板倉耳鼻咽喉科クリニック)

 

 


 

 

 

第31回 「インフルエンザについて」(2017年2月)

 

寒さの厳しい季節となりました。例年12月から3月にかけて流行することが多いインフルエンザですが、今シーズンも2017年1月に入り少しずつ患者数が増えてきました。

 

インフルエンザはかぜ症候群の一つですが、全身症状や高熱を伴う点がいわゆる感冒とは異なるところです。典型的な症状は突然の発症、38℃以上の高熱、頭痛や関節痛、筋肉痛などの全身症状、鼻汁や咽頭痛などの上気道症状や咳や痰などの呼吸器症状ですが、最近では微熱の場合や無熱(熱のない)のインフルエンザ患者が存在することがわかってきました。

 

高齢者や呼吸器の病気や心臓の病気がある方はインフルエンザの症状が重くなったり、元々の病気が悪化したり、細菌性肺炎を合併することが多く入院や死亡の重大な原因となります。

小児(特に乳幼児)では高熱、熱性けいれん、気管支炎、脱水などにより入院の原因となり、またまれにインフルエンザの発熱から早期の段階(多くは24-28時間以内)で嘔吐や異常行動、意識障害、けいれんなどの症状が出現する急性脳症(インフルエンザ脳症)を起こすことがあり注意が必要です。

 

インフルエンザウイルスの潜伏期間は短く24-48時間で接触感染や咳やくしゃみによる飛沫感染が主ですが大規模な流行には飛沫として飛散したウイルスによる空気感染の関与が大きいと考えられています。インフルエンザ流行期には人込みや繁華街への外出を控えること、外出時はマスクを着用してうがいや手洗いを行うこと、室内の十分な加湿をすること、十分な休息とバランスの良い食事をとること、流行前にインフルエンザワクチンを接種することが予防の基本となります。

 

インフルエンザの診断は症状のみでは容易ではなく迅速診断キットを併用することになります。但し発症早期のウイルスが少ない時期には迅速診断キットで陰性(インフルエンザの反応がでない)となり、半日から1日後に再検査をすると陽性になることがあるため発症からの時間経過には注意が必要です。

治療ですがインフルエンザには基本的にウイルス感染であるため、十分な水分補給や休息、安静による治療と咳止めや解熱剤などによる症状に合わせた治療(対症療法)が主な治療となります。

 

また、現在日本では内服薬(タミフル)、吸入薬(リレンザ、イナビル)、点滴注射薬(ラピアクタ)の4種類のインフルエンザ治療薬がありますが、医師がその必要性を判断しての処方となりますので、

受診した医療機関でご相談ください。

 

寺内政也(寺内医院)

 
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