第53回 「心房細動」 ~正しく理解し適切な治療を~(2018年12月)

 

 

心房細動とは不整脈のひとつで、心臓の一部である「心房」という部屋がけいれんするように小刻みに震えてしまい、規則正しく収縮できなくなった状態をいいます。胸がドキドキするとか脈がバラバラであるといったいわゆる動悸のほかに、胸部の不快感や息切れ、疲労感などの症状でみつかります。一方、無症状のことも少なくなく、定期健診の心電図検査などで初めて指摘されることも珍しくありません。

 

心房細動発症の危険因子としては、まず心臓弁膜症や心筋梗塞、心不全、高血圧など心臓に関係するものが挙げられますが、糖尿病や甲状腺機能亢進症などの病気に合併することや、加齢やストレス、睡眠不足、多飲酒や喫煙、肥満などに伴うこともあります。

 

心房細動になると心臓のポンプとしての働きが弱くなるため心不全に陥ることがありますが、通常それが直ちに命を脅かすというわけではありません。心房細動で怖いのは、なんといっても脳梗塞の原因となる危険性があることです。心房の中によどみができることで生じた血のかたまり(血栓)が血流に乗って脳に運ばれ、血管を詰まらせるために起こります。ひとたび脳梗塞を来すと、半身麻痺や失語症などの重篤な後遺症を残すことが多く、約半数で寝たきりなどの介護が必要な状態になったり、命を失ったりします。

 

心房細動と診断されたら、治療はいくつかあります。まずは正常な脈(洞調律)に戻す治療です。これには従来、薬(抗不整脈薬)で治す方法や電気ショックによる方法などが用いられてきました。最近ではアブレーション(焼灼術)という聴き慣れない治療も行われるようになってきています。これは脚のつけ根から細い管(カテーテル)を挿入するなどして心房の壁を熱したり凍らせたりして組織を壊死させ、心房細動の原因となる異常な電気信号の発生源を切り離すという治療です。薬が効きにくい場合や自覚症状が強くて困っている場合などに有用で、心房細動になってからあまり年月が経っていない症例や重症の心臓病を合併していない症例が良い適応になります。より根治的な治療ということもでき、上手く行けば、長期間にわたって薬を飲み続けたり頻繁に通院したりする必要がなくなる可能性があります。

 

正常な脈に戻らないときには、心拍数の速い状態が続く場合があるので、それを調整するための薬を飲んでいただくことがあります。また、血栓の発生を防ぐために、血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬)の内服も必要になってきます。これには働きの異なるいくつかの種類の薬あり、それぞれが利点と欠点(一日に内服する回数や量、価格、食べ物に関する制限、頻繁な採血による管理などの違い)を有しています。長期にわたって飲んでいただく必要がある薬ですから、各々の特徴を十分に理解していただいたうえで選択することになります。

 

少々わかり難い話になってしまいましたが、心房細動というのは放置すると意外に怖い病気といえると思います。とはいえ、きちんと治療を行えばそれほど厄介な病気でもありません。疑わしい症状がある場合には、まず、かかりつけの医師に相談してみてください。

 

 

佐藤泰史(加藤医院)

 

 


 

 

第52回 「シスター・メアリーの謎-無症候性アルツハイマー型認知症-」(2018年11月)

 

 

県西在宅クリニック舘林という、在宅医療の特化した診療を提供させていただいています。去年の8月より開業し、医師会にも入会させていただきました。

 

在宅医療はほとんどが超高齢者の方です。私が元々は精神科が専門ということもあり、様々な段階の認知症の方と接していますが、薬物療法を行なっても現在の治療の限界、時の移ろいには抗えず、無力さを感じることが多々あります。

 

認知症はいくつかに分類されますが、脳血管性以外はっきりとした原因も分からず、統計により割合もかなり差があり、身近な疾患なのにまだまだ分からない事が多いのが現状です。最も多いのはアルツハイマー型認知症ですが、病理学的には脳にアミロイドβという異常タンパクの蓄積が原因の一つとされ、発症には加齢や遺伝、生活習慣病などが関わっていると言われています。アミロイドβが蓄積する原因は不明です。また現在の抗認知症薬は症状改善薬で根治治療薬ではありません。

 

今のところ希望がないような状況ですが、ご存知かもしれませんがナン・スタディという認知症研究での明るい話題もあるのでご紹介します。

アメリカのとある修道院で、食事や日々の生活がほぼ同じ修道女たち678名の献脳を解剖したところ、60人の脳にアミロイドベータの蓄積などアルツハイマー病の所見がみられ、そのうち4分の1の人は生前、認知機能に異常がなかったそうです。つまり無症候性のアルツハイマー型認知症です。中でも、101歳で天寿を全うしたシスター・メアリーは剖検上、アミロイドβが広範に認められ、正常脳の7割780g程に脳萎縮があったにもかかわらず、死の直前まで生活は自立し、知的水準は保たれ、MMSEは27/30点だったそうです。

 

彼女は84歳で教師を引退した後も「私が引退しているのは眠っている時だけよ。」というのが口癖で、何事にも前向きで、生涯奉仕活動に従事していました。何故シスター・メアリーが無症候だったのか、青年期の知的水準の高さ、規則正しい生活など解析で挙げられていますが、自分らしく生き生きと過ごしていたことも要因ではないかと思います。

 

在宅医療で自宅で自分らしく人生を全うする方のお手伝いを出来たらと思い、日々診療に励んで行こうと思っています。

 

 

白井聖子(県西在宅クリニック舘林)

 

 


 

 

第51回 「乳がんの薬物療法、特に手術後の再発予防について」(2018年10月)

 

 

毎年10月は「乳がん月間(ピンクリボン月間)」です。

乳がんの治療は、外科的治療である手術の他に、放射線治療、薬物療法があり、これらを組み合わせた集学的治療が行われます。今回は乳がんの薬物療法についてご紹介したいと思います。

 

薬物療法にはホルモン療法(内分泌療法)、抗がん剤(化学療法)、分子標的治療があります。

薬物療法を行う目的としては、大きく分けて、①手術後の乳がんの再発予防、②乳がんの再発、特に遠隔転移が起こった場合の治療とがあります。同じくすりでも目的によっては使えない場合(再発乳がんにのみ使えるくすりがある)もあります。

 

手術後の薬物療法は遠隔転移(乳房やその周囲のリンパ節以外の離れた場所に発生する再発)の予防として行います。

ホルモン療法はホルモン受容体(エストロゲン受容体とプロゲストロン受容体)陽性の乳がんに再発予防効果があります。比較的副作用は少なく、閉経前か閉経後かによって、くすりを使い分けています。内服薬と注射薬があり、内服薬のみであれば、自宅でできる簡便な治療です。

 

抗がん剤は通常、点滴で行う治療です。抗がん剤というと苦しい副作用というイメージが強いと思いますが、現在では副作用、特に吐き気や、骨髄抑制(主に、細菌に対する体の抵抗力が落ちる)に対しての支持療法(副作用を軽減する治療)も進んでいます。

 

分子標的治療とは聞き慣れない言葉だと思いますが、乳がんのなかにHER2という蛋白を持っており、増殖が盛んなタイプがあります。分子標的治療薬はこの乳がんのHER2蛋白にくっついてがん細胞の増殖を抑える治療薬です。従って、HER2が陽性な乳がんにのみ効果があります。点滴で行う治療法で副作用は比較的少ないですが、心不全を起こすことがあり、心機能を定期的にチェックする必要があります。

 

これらの薬物の使い分けに関しては、どのくすりの再発予防効果が期待できるか、再発の危険性、患者さんの状態や治療法に対する希望などを考慮して決定することになります。

 

近年ではがんの大きさ、リンパ節転移の有無、程度で決まる病期(ステージ)に加え、サブタイプ分類というがん細胞の性質で分類することによって治療方針を決めています。サブタイプ分類はホルモン受容体、HER2、Ki67(乳がんの増殖能)で行います。ホルモン受容体が陽性の場合でも、必要によっては抗がん剤や分子標的治療も行います。ホルモン療法に加えて抗がん剤も行った方がよいかは、さらに詳しい乳がんの遺伝子解析を行って判断することもあります。但し、これはまだ保険適応にはなっていません。

 

乳がんの薬物療法も年々進歩しており、使えるくすりも増え続けています。その人にあった最適な薬物療法を行うことにより、手術に加え、放射線治療、薬物療法を併せた戦略で乳がんから命を守ることができるのです。しかし、まずは早期に発見することが重要です。月1回程度の自己検診と定期的な乳がん検診を心がけましょう。

 

堀井吉雄(堀井乳腺外科クリニック)

 

 


 

 

第50回 「スポーツによる頭部外傷(脳振盪に注目して)」(2018年9月)

 

 

2014年11月グランプリシリーズ中国杯で、フィギュアスケートの羽生結弦選手が公式練習中に頭部をけがした直後に、フリー演技に出場したことに対し、棄権させるべきだったと指摘する意見が相次いでいた。

 

スポーツによる頭部外傷は誰にでもおこる可能性があります。

そのなかで、脳振盪は、軽視されがちですが、極めて深刻な問題を引き起こすことがあるからです。

脳振盪は、頭をぶつける、揺さぶられる等の頭部への直接的な衝撃や、頭部に伝わるような体幹への間接的な衝撃でも発生します。

脳振盪は意識を失うとは限りません。意識があっても、頭痛や吐き気、めまい感、ぼうっとしていたら脳振盪を疑ってください。

 

脳振盪の症状はほとんどの場合、迅速かつ完全に回復しますが、一部の選手ではその日の間ずっと続いたり、何週間も続いたりする場合があります。受傷後の脳には十分な回復時間を与えないと危険です。

脳が完全に回復する前に、再度強い衝撃を受けると、セカンド・インパクト・シンドロームを発症し、脳に重篤な障害を残したり、死亡することもあるので、回復するまではスポーツは絶対に行ってはいけません。致死的な急性硬膜下血腫を引き起こすこともあります。

 

羽生結弦選手も本番で激しいスピンや、再び頭を打って脳に強い衝撃を受けていたら、重篤な状態におちいった可能性があったのです。

 

また、脳振盪を繰り返すだけで、記憶障害など脳の認知機能障害のリスクは、3~5倍に跳ね上がるといわれています。

 

脳振盪を疑う選手は直ちに競技をやめさせ、専門医の診療を受けさせましょう。

少なくても24時間は経過を見る必要があり、ひとりで過ごすことは避け、また、自動車の運転はさせないでください。

脳振盪を起こした場合、少なくとも2~4週間は頭部に衝撃を与える可能性のあるスポーツは禁止すべきで、その後 症状がなければ、徐々に運動を再開してもよいでしょう。

 

脳振盪は一過性で、後遺症も残さないことが多いのですが、致命的になることもあり、注意が必要です。

 

川島利彦(川島脳神経外科医院)

 

 


 

 

第49回 「夏を楽しく過ごすための暑い日の注意点」 (2018年8月)

 

熱中症について                             

今年の夏は異常といえるような猛暑の連続で気象観測史上今回初めて、といった表現を連日耳にしていることと思います。熱中症で救急搬送され重篤な状態に陥っている方も多数出ています。

そこで今回熱中症について少し考えてみましょう。

 

まず初めに、人間にとっての水の役割を知りましょう。

【体内での水の役割】

 A 様々な物質の溶媒としての役割

   生体内反応の場所

   消化・吸収作用を助ける

   物質の輸送を行う

   物質の分泌と排泄の溶媒

   体内電解室の平行維持

 

 B 体温の調整

   体温の保持

   体熱の放散

 

次に脱水の状態で起こる変化を挙げてみましょう。

【脱水とは】

水分摂取量不足による水分不足と嘔吐や下痢、尿量増加による塩分を主とした電解質が不足している状態。

 

【脱水による体調の変化】

 A 水分不足

   脳血流低下:めまいや立ち眩み

   消化管の血流低下:食欲低下

   発刊の減少:体熱の上昇・発熱

   循環血漿量低下:脈が早くなる

 B 塩分や電解質不足

   しびれや筋肉痛・こむら返り・倦怠感・頭痛

 

【脱水の身近な症状】

   手足が冷たくなり、指先を押すと元のピンク色に戻り難い

   口腔内の乾燥

   手背の皮をつまむとすぐに戻らない

   頻脈で動悸がする

 

ではこのような症状が出たらどうしたらよいでしょうか?

もちろん、意識がもうろうとして、痙攣がみられるようであればただちに救急車を呼ぶことが大切です。

 

【水分の摂取】                                                                  

        初期の症状であれば、水や麦茶、スポーツ飲料をゆっくり飲みましょう。

    体重減少があり明らかに脱水であると感じるようであれば、吸収の良いブ 

    ドウ糖とナトリウムイオンを医学的知見から配合設計された経口飲料を飲

    むとよいでしょう。(市販では、OS-1)

 

【水分摂取量のめやす】

    成人であれば食べ物の水分を除き、1日約1L~1.5L、1回に100mlなら10回か  

    ら15回に分けて飲めると身体にやさしい水分補給となります。。

 

 

【その他の注意点】

    小さなお子さんは体温調節機能が未熟で、呼気や皮膚から水分が蒸発しや

    すいので要注意です。また成人と違って身長が低くいので、熱いコンクリー

    ト道路表面に近いことも気を付けてください。

    高齢の方は体内に蓄えている水分の比率が少なめですので注意が必要で

    す。

    十分な睡眠ときちんとした食事が基本であることは言うまでもなく規則正

    しい生活を送るように心掛けましょう。夏休み中は要注意です。

    

 

【部活動について】

    確かに、炎天下での運動が危険である事は誰もが認識しています。しかし

    ながら、湿度が高い日は、汗の蒸発がなく体内に熱がこもりやすくなって

    熱中症になりやすいので要注意です。体育館や柔道場、剣道場での部活

    動の生徒は気を付けてください

 

最後になりましたが、まだまだこれからも暑い日々が続くと思います。

家族や友人、ご近所同士お互いの相手のことを少し気にして、みんなで健やかな毎日を送りましょう。

 

 

 

澤田 実(澤田皮膚外科)

 


 

 

 

 

第48回 「関節軟骨って難しいな」(2018年7月)

 

 

医局に席があった頃、関節軟骨を人工的に作成する研究をした。家兎の膝関節から関節軟骨を採取し、軟骨細胞の培養を行い、関節軟骨を作成する研究だった。

 

一度傷ついた関節軟骨は修復されない。損傷が深部まで達すれば変形性関節症になる。変形性関節症に行われる手術は、関節鏡手術、骨切矯正術、人工関節置換術、移植術など多くの術式があり、重度の関節症には置換術が多く行われる。術後の関節機能は全廃となる。関節面のアライメントを整え、関節軟骨を作成して移植すれば、置換術は不要になると信じ、関節軟骨の研究をした。

 

 

関節軟骨は軟骨細胞がⅡ型コラーゲンやプロテオグリカンといった軟骨基質で形成されている。軟骨培養の技術的確立と軟骨基質作成の研究をした。

軟骨細胞培養は難しい。培養液の作成も難しく、マクロではうまくいったようでも、ミクロでは線維芽細胞様に変化してしまう。

事実、生体で軟骨欠損部に膜状の組織が形成されることがあるが、硝子軟骨ではなく線維軟骨である。軟骨基質の作成も難しかった。生体の関節軟骨は圧力に可塑性があり、押すと凹んで元に戻る。元に戻る際に関節液が基質内に入り込む。指導していただいた先生の提案で、基質に性質が似ているとのことでマンナンパウダーに培養液を混ぜてこんにゃく基質を作成した。

しかし、一般的に食用コンニャクを作るには熱を加えて固める。熱を加えたこんにゃく基質には軟骨細胞を封入できず、固める前にこんにゃく基質に細胞を混ぜても、熱を加えると細胞が死滅してしまい、満足のいく基質はできなかった。

 

数年前、ヒトiPS細胞由来軟骨細胞から足場材(軟骨基質)を使わずに軟骨組織を作成する培養法を確立したとの発表があった。

さすがiPS細胞だなと感激した。軟骨作成に苦労した者としては、一刻も早く臨床応用され、変形性関節症の治療の第一選択になると期待したい。

 

 

進上泰明(しんじょう整形外科クリニック)

 

 


 

                                                                                                

 

 

第47回 「肝癌診療の今昔」(2018年6月)

 

 

私は10年前に開業するまで25年間外科医でした。胃癌、大腸癌、膵癌の手術もし、最後は肝癌を専門としました。

35年前、獨協医大第2外科教室に入局した頃は、肝臓の手術は年に数例でした。肝機能正常なら肝臓は70%切除可能ですが、肝癌は、慢性肝炎・肝硬変の患者さんに発症します。肝機能が低下した患者さんの肝癌がどこまで切除できるのか、何を指標に判断するかは、全く手さぐりで混沌としていました。術後の合併症は多く、担当医は何日も泊まり込むのが当たり前でした。

 

今年4月5日に外科学会に出席し、肝臓外科の著しい進歩に驚きました。手術手技は標準化されて安全になり、3DCTで肝切除領域の血管走行が把握され、出血量は少量となり、合併症もなく短期間で退院するのが普通となりました。

 

一方、今回の学会で、C型肝炎が完治した後の肝癌発癌までの平均期間は、インターフェロン(IFN)治療後は平均4年、抗ウイルス剤(DAA)治療後は平均8か月という報告がありました。

IFNが持っていた肝癌発生抑制効果が、DAAには無いと考えられる事です。C型肝炎がDAAの登場により完治可能となり、肝癌の発生は、10~20年後には減少します。それまでは、C型肝炎の完治後でも長期間の経過観察が必要です。

また、今後は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からの肝癌が増加すると考えられ、慢性肝炎患者さんへの定期的検査の重要性は同様です。

 

 

佐久間 敦(さくま内科胃腸科クリニック)

 

 


 

 

 

第46回 「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」について(2018年5月)

 

 

 アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning:ACP)という言葉をお聞きになったことがありますでしょうか?簡単に言うと“もしものための話し合い”です。「意思決定能力が低下する前から、本人の意思を尊重して、ご家族さらには医療介護者が一緒になってケア全体の目標や具体的な治療・療養方針について話し合う過程(プロセス)」ということになります。

 

従来日本では、「死」について語ることは縁起でもないという理由から避けられる傾向にありました。しかし、人生の最後は必ず誰にでもやってきます。元気で決定能力のしっかりしている時点から、「何を大切にして、どのように生きたいか、どんな場所で、どのような最期を迎えたいのか」こうしたことを繰り返し話し合うことは、自分らしい、より良い人生を全うしていくことにつながっていきます。

 

 医師会では1市5町より委託を受けて、29年4月「在宅医療介護連携相談センターたておう」を開設いたしました(詳しい事業内容については、ホームページをご覧ください)。本年度は、「ACPの普及・啓発」を重要な取り組みの一つと考えて、1市5町各地区でミニ講演会を開催する予定です。多くの住民の皆様にご参加いただき、ACPについて理解を深めていただきたいと考えております。

 

 

竹越 亨(竹越医院)

 

 


 

 

 

第45回 「ものもらい(麦粒腫)」(2018年4月)

 

 

 麦粒腫は、まぶたの皮脂腺や汗腺、マイブーム線に細菌が感染して起こります。

まぶたが赤く腫れ、痛みがあります。治療は細菌感染が原因のため、抗生剤の点眼液や眼軟膏、内服薬を症状に応じて使用します。化膿した点が見られる場合は、切開してうみを出します。

 

一般に「ものもらい」といっていますけれど日本各地でいろんな言い方があります。この辺の地域では「めかいご」「めけご」と年配の方は言ってるようです。東北では「めっぱ」関西では「めばちこ」、ある地域では「ばか」ということもあります。患者さんにこれはものもらいですよと説明したら「ああ、ばかですね」と言われて、びっくりしたことがありました。

ちなみにポルトガル語では「テルソー」といいます。

 

又、よく聞かれるのが「うつりますか?学校へ行けますか」というのがあります。麦粒腫はうつりませんと言うとほっとされます。

 

眼科でうつる病気は「はやりめ」です。これはアデノウィルス感染によって起こる結膜炎です。発症してから治るまでに、2週間ほどかかります。アデノウィルスは感染力が非常に強いので、周り人に移さないように注意しましょう。

 

はやりめにかかったときの注意点は、手を流水と石けんでよく洗う、目をさわらない、タオルや洗面用具は、家族のものと別にする、学校や保育園は医師の許可が出るまで休むなどのことが必要です。重症では角膜混濁を起こすことがあり、注意が必要です。

        

 

 鈴木英司(鈴木眼科医院)

 

 


 

 

 

第44回 「花粉症(アレルギー性鼻炎)とは何か?」(2018年3月)

 

 

アレルギーとは、本来は体にとって有害でないような物質に対して、体が過剰に反応して起こる病気です。その物質(アレルギー原因物質)のことを、抗原(こうげん)と呼びます。特に鼻は外から様々な物質を吸い込むため抗原に対する反応が起こりやすく、鼻粘膜で起こったアレルギー反応によりアレルギー性鼻炎が生じます。原因物質が花粉の場合、アレルギー性鼻炎と目の結膜で起こった反応(アレルギー性結膜炎)などをひっくるめて花粉症と呼びます。

 

症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまりが主になりますが、花粉症の場合は目の症状(かゆみや涙目)に加えて、のど・皮膚のかゆみや咳などを訴える方もいます。アレルギー性鼻炎の抗原は大きく分けて、ハウスダストやダニなどのように1年を通じて症状を起こすものと、花粉のようにある特定の時期に症状を起こすもの、の2つがあります。

 

特にここ北関東では、花粉はスギ(2~4月)のみでなく、ハンノキ(1~3月)、ヒノキ(3~5月)、カモガヤ(5~7月)、オオアワガエリ(6~8月)、ブタクサ(8~10月)、ヨモギ(8~10月)、セイタカアワダチ(アキノキリンソウとも言い、10~11月)など、1年を通じて何がしかの花粉が飛んでいます。また花粉症の患者さんの中には、リンゴ・キウイ・モモ・サクランボ・バナナなどの果実を食べると口内~のどがイガイガしたり腫れぼったくなったり等の症状を訴える方がいますが、これは口腔アレルギー症候群という病気の可能性が高く十分な注意が必要です。

 

アレルギーが疑われた場合には、自分が何に対してアレルギーがあるのかをきちんと認識するのが重要です。そのため簡便な検査としては、採血によるアレルギー検査などがあります。検査によってお金もかかりますし、検査をしたからと言っても治療そのものに大きな違いは出ないかもしれません。しかし、アレルギーの原因が分かることで今後の対策が立てやすくなり、治療をするうえで最終的には大きなメリットになると思います。

 

花粉症を含めたアレルギー性鼻炎の治療法には様々なものがあり、自分でできるセルフケア(抗原の除去・回避)、適切な薬物療法、レーザー治療などの手術療法、体質改善を目指す舌下免疫療法などが挙げられます。花粉症でお悩みの方は、専門医を受診して自分に合った治療法を十分に相談され、納得したうえで治療を選択されることを是非お勧めします。

 

 

瀬嶋尊之(板倉耳鼻咽喉科クリニック)

 

 


 

 

第43回 「月経困難症」(2018年2月)

 

 

月経困難症とは月経に伴って生じる体や気分の不快な症状です。体の不調としては、腰痛、下腹部痛、頭痛、吐き気、下痢、便秘などがあります。心の不調としてはイライラ、眠気、不安感、気分の落ち込みなどがあげられます。

 

これらの症状とうまくつきあっていくには、体を冷やさない、適度に運動して血行をよくしておく、バランスのとれた食事を心がける、ストレスをためない、体調不良の時期には予定をつめこまない、重要事項の決定はしないなどの注意が必要かと思います。

 

さて、月経困難症の症状のうちの月経痛に関してですが、痛みのため学校や会社を休んでしまう、鎮痛薬を飲む回数が増えてきた、効かなくなってきた、などの症状がある場合は婦人科の病気が隠れている事があります。子宮筋腫や子宮内膜症です。10代でも手術をしなければならないほどひどくなっていた患者さんもいました。月経痛は我慢するしかないもの、子供を産めば治るなどというのはもはや迷信です。気になる症状があるときは、産婦人科を受診してみてください。

 

 

飯塚真理(まりレディスクリニック)

 

 


 

 

第42回 「スマホやり過ぎ注意」(2018年1月)

 

 

今や手放せなくなったスマートフォン(スマホ)。電車内の光景は異様ですね。歩きスマホや自転車・自動車のながら運転もあふれています。どこでもところ構わずツイートや写メと画像アップです。ネットサーフィンやゲーム、動画視聴など、端からみれば時間の「浪費」です。「時間どろぼう」とはよく言ったものです。ネット上の薄っぺらいやりとりから残念な結果を招く事件や事故も多いですね。確かに便利になりましたが、果たして本当にそこまで必要なものでしょうか。

 

スマホ漬けでは脳の「前頭前野」の血流・機能が低下するといわれています。記憶や思考、コミュニケーション能力や、集中力、感情のコントロールに関する部位です。キレやすい、仕事や勉強に集中できないなど、トラブルや事件につながりそうですね。思い当たるところはありませんか。

 

今やそのスマホが、成長期にある乳幼児から小中学生にまで繁殖中です。スマホ漬けの子どもたちがそのまま大人になって将来の日本は大丈夫でしょうか。使い方やルールはもちろん、マナーやモラルもきちんと身につけてほしいと思います。そのお手本はやはり大人ですよ。

 

 

小柳富彦(こやなぎ小児科)

 

 

 

 
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